本日の映画紹介は
「君を愛したひとりの僕へ」です。
○原作 乙野四方字
○監督 カサヰケンイチ ○脚本 坂口理子
○キャラデザ 町田真一
○音楽 大間々昂
○製作 トムス・エンタテインメント
○封切日 2022年10月7日
■あらすじ
乙野四方字による小説「僕が愛したすべての君へ」「君を愛したひとりの僕へ」を2作同時にアニメーション映画化したうちの1作。人々が並行世界を行き来している世界を舞台に、同じ名前を持つ2人の少年がそれぞれの世界でひとりの少女と恋に落ちる姿を描く。
両親が離婚し父と暮らす小学生・日高暦は、父の職場で佐藤栞という少女と出会う。暦と栞は互いにひかれ合うが、やがて親同士が再婚することに。2人は兄妹にならない運命が約束された並行世界に駆け落ちするが……。(映画.com引用)
2016年に刊行されTikTok紹介で
話題となった並行世界での別々の視点2作で
展開されるラブストーリーを描く
乙野四方字による原作小説のアニメ映画化。
「君を愛したひとりの僕へ」(君愛)
「僕が愛したすべての君へ」(僕愛)
観る順番で結末が変わるコンセプトは
斬新で面白い展開の仕方に思います。
~映像・音楽~
監督は「カサヰケンイチ」
アニメ監督過去作で言うとバクマン。や
古いものだとハチクロ1期など。
本作2作品公開という形式を取っていますが
実は2作ごと監督や制作会社が違います。
音楽は「大間々昂」
~演出・時間~
上映時間は98分。
両親の離婚後、父親との道を選択した
日高 暦(こよみ)は、父親の研究所で
出会った栞(しおり)と恋に落ちた。
暦と栞の片親達が勤める研究所は
虚質科学という並行世界の研究を行っていた。
ある時、暦と栞の片親同士の再婚話を機に
自分達が結婚できないと思いこんだ二人は
虚質科学の研究中の並行世界を行き来する
タイムシフトによって「両親が離婚しない世界」
に移行を試みるが、栞は並行世界での交通事故で
意識のみが事故の交差点に残されてしまう。
本作2作品構成になっているがコンセプトで
観る順番によって結末が変わるという。
君愛(本作)→僕愛(別作):幸せな結末
僕愛(別作)→君愛(本作):切ない結末
上映時間については世界観説明に
かなり時間を費やしている印象で
ラブストーリー部分は駆け足で
もう少し時間が欲しかった印象もある。
~見所ポイント~
①並行世界に挑む暦
並行世界のタイムシフトによって
想い人の栞を亡くしてしまった暦が
虚質科学の研究の道へ進み、自身で
栞を救うことに奮闘する姿が感動的です。
並行世界の世界観説明は少ないものの
通常のタイムパラドックスとは少し違い
「意識だけの並行移動」という視点は面白い。
(最終的には物理的な影響が出てきますが)
②観る順番について
これはネタバレ防止で難しいですが
君愛(本作)→僕愛(別作):幸せな結末
については2作観終って思い返すと
「なるほどなぁ」と納得。
また物語構成の観点からも
「どっちから見た方が良いか」となると
君愛(本作)→僕愛(別作)の方が
おそらく世界観や物語の理解は
しやすいような印象があります。
ちなみに1作だけを見るとするならば
絶対に君愛(本作)だと思います。
何故だかは詳しくは話せませんが
これは君愛(本作)という世界線から
僕愛(別作)の世界線へ介入するという
物語の前提からという理由もあります。
~注意点~
①2作同時公開の効果
並行世界という物語世界観と
現実世界の劇場2作同時公開を
上手く合わせた展開は面白い。
ただ、本作も別作も共通ですが
2作品公開で致命的な問題がある。
それは作中でいう並行世界(別世界)の
シーンを描き過ぎてしまったせいで
中途半端な別世界の要素が不完全燃焼で
非常に見応えが気持ち悪い印象があった。
例えば本作と別作でそれぞれの並行世界の
シーンが全く同じで流れてしまう場面とか。
また2作それぞれで主題のシーンはセリフ有で
別作では同シーンをBGMに乗せる交換演出。
この中途半端な演出はいらなかった。
せめて同一シーンを描くとするなら
「並行世界でも同一事象」の方が運命的。
(そっちの方がよっぽど世界観に沿っている)
もちろん「1作品である程度完結」という
大前提あっての配慮なのかもしれないが
それであれば2作品ごと描かない割り切りでも
良かったのではないかと思う。
②並行世界などの世界観理解
もともとがSF小説原作という事もあり
並行世界や事象理論など説明過多な印象。
またその魅せ方も小説文章を
そのままキャラに話させている印象で
アニメーションとしての魅力は無い。
世界観説明にほとんど重きを置いてしまい
ラブストーリー部分が薄味なのも残念。
③声優がぁ・・
アニメーション映画として
声優の違和感オールスターと言える程
かなり質は悪かったと思う。
どのキャラクターも違和感があったし
アニメ映画のなかでもかなりワースト寄り。
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「君を愛したひとりの僕へ」
を一言で言うならば
「栞を愛したひとりの暦へ」
タイトル変換をするとこうなる?が
変換して気付くのは俯瞰した視点。
本作のタイトルは別作の僕からみて
別作のタイトルは本作の僕からみた
そういう意味合いにも取れて面白い。
声優、2作品の魅せ方、世界観説明など
色々と致命的な要素があって惜しいですが
原作内容や世界観は面白い作品だと思う。
5つ星評価
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