本日の映画紹介は 「耳をすませば」です。
○原作 柊あおい
○監督/脚本 平川雄一朗
○音楽 髙見優
○製作 オフィスクレッシェンド
○封切日 2022年10月14日
■あらすじ
読書好きな中学生・月島雫は、図書貸出カードでよく名前を見かけていた天沢聖司と最悪の出会いを果たす。しかし雫は聖司に大きな夢があることを知り、次第に彼にひかれていく。そんな聖司に背中を押され自身も夢を持つようになる雫だったが、聖司は夢をかなえるためイタリアへ渡ることに。2人は離れ離れになってもそれぞれの夢を追い、10年後に再会することを誓い合う。それから10年が過ぎた1999年。出版社で働きながら夢を追い続ける雫は、イタリアで奮闘する聖司を想うことで自分を奮い立たせていたが……。(映画.com引用)
ジブリによるアニメ映画化で有名な
柊あおい:原作漫画「耳をすませば」の
10年後の物語を描く実写映画の本作。
中学時代に想いを寄せ合った
月島雫と天沢聖司の10年後を描く
オリジナル要素を加えた注目作です。
~映像・音楽~
監督は「平川雄一朗」
漫画原作実写映画過去歴でいくと
「約束のネバーランド」など。
音楽は「髙見優」
本作の主題歌はカントリーロード・・
ではなく実は「翼をください」となる。
これはジブリ作品ファンからとすると
かなり残念な点だったかなと思います。
(これは音楽権利関係からなのでしょうか)
~演出・時間~
上映時間は114分。
演出としては原作漫画・ジブリと同じく
中学時代のキラキラとした恋愛模様と
本作オリジナルの10年後要素を
前後二部構成ではなく
交互に入れ替わるような演出で
ひとつの作品、時間軸で描いていく。
この演出は特に違和感なく
見やすく飽きなく良かった印象で
中盤までは飽きずに楽しめました。
後半からは注意点でも書きますが
ちょっと置いてけぼり感が強く
ここから長く感じてしまう印象も。
~見所ポイント~
①中学時代の演出
原作漫画自体が30年以上前でもあり
少女漫画のキラキラとした恋心の演出の
中学時代雫役の安原琉那さんは良かった。
原作は中学1年、アニメは中学3年ですが
これは原作漫画に合わせた年齢の印象。
映画初主演ということや
舞台のようなある意味オーバーな
リアクションが個人的には好きでした。
独特の古臭さが妙に馴染んでいた感じ。
中学時代は漫画、ジブリ共の要素を
上手く組み合わせた印象がありました。
②10年後の二人を描く意欲作
中学時代に想いを寄せた二人の
月島雫と天沢聖司は10年後も
互いに想いを寄せ合っていた。
天沢聖司はチェロのプロ演奏者として
イタリアに旅立って夢を追い
月島雫は日本で出版社の編集者として働き
小説を描き夢を追い続けていく。
10年の歳月を経ても想い合う二人を
オリジナルとして描いてく点が注目です。
~注意点~
①重大な欠点解説の前に
ここからは大きなネタバレとなりますが
本作品の10年後の流れを端的にまとめると
●雫と聖司は10年後も遠距離恋愛。
●天沢聖司はイタリアでチェロの演奏者で
チームを組んでアルバム制作など着々と
夢を叶えていく真っ只中。
●月島雫は日本で出版社で働きながら
小説を描いては応募の繰り返しで夢を追うが
なかなか夢は叶わず現実と闘っていく。
●中学時代の杉村と夕子は結婚。
●雫は夢を叶えていく聖司と自身を重ね
モヤモヤからイタリアの聖司に会いに行く
●チェロのチームのなかの一人の女性から
雫と聖司の遠距離恋愛は本当なのか!?と
恋敵として三角関係な「機転」が生まれる。
●雫は聖司との別れを決意して日本に戻る。
●雫に聖司からの手紙が届き中学時代の
雫との出会いや雫を応援するような気持ちが届く
●仕事に前向きに没頭する雫の姿が描かれる
●突然、中学時代と重なるかのように
自転車で迎えに来た聖司が目の前に現れる。
●聖司はイタリアでの夢、拠点を日本に移し
雫にプロポーズ。二人は想いを伝え合う。
②雫と聖司の距離感&違和感
まずはイタリアのチェロチームの一人の
聖司にも想いを寄せるイタリア美女が
「10年の遠距離恋愛なんでありえない」と
視聴者が感じる現実感を雫にぶつけます。
まずは10年の遠距離恋愛の経緯が
全く描かれず、久々にイタリアに来たのに
雫は聖司宅で無くホテルに泊まるという
この謎の距離感が今でもハテナ?で
この時点で二人は付き合っているのか?と
途中頭が混乱するほどの違和感。
久々に会った?と思われるシーンも
別れ直前のカップルのような
なんとも言えないシーンは違和感強く
これは自分が読み取れなかっただけ?
とにかく本作の10年後の二人の距離感が
ハテナ?で全く世界観に入り込めなかった。
③聖司の決断
本作最大の疑問点は間違いなく聖司で
物語終盤、雫と聖司にどのような話が
交わされたかは不明ですが雫は聖司との
別れを決意し日本に戻ることになります。
聖司も雫を日本に帰したことからも
二人は完全に別れを決断したと感じる。
聖司は日本にいる雫に手紙を書き
中学時代からの想いを書き留め伝え
ここで雫との別れ、物語が終わったと
誰もが感じていたところ・・
日本の雫のもとに聖司が突如現れ
自転車にのって告白をしたあの地に。
そこでチェロ演奏拠点を日本に移す事と
雫にプロポーズを伝えてハッピーエンド。
10年の歳月をかけて挑み、
遠距離恋愛も続けた聖司の夢でもある
イタリアでのプロのチェロ演奏。
チームもつくり上げて積み重ねた夢を
日本に移して雫にプロポーズという結末は
果たして本当に聖司と雫が思い浮かべた
ハッピーエンドだったのだろうか。
雫は聖司の決断を本当に良いと感じたのか。
決してそうは思えないし、仮にそうであれば
そもそも異国の10年の遠距離恋愛という設定が
全く生きていない本末転倒な見応えと感じる。
聖司が雫に書いた手紙のシーンのように
「互いの夢を応援し合う」という
流れでエンドに向かいそうだったところが
急に単調な、それこそ中学生時代に戻った
キラキラとした少女漫画の世界に戻ったことは
10年後というオリジナル要素として
何より実写の恋愛映画として描くには
あまりにチープな結末だったと感じた。
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「耳をすませば」を一言で言うならば
「耳をすませど・・」
原作タイトルの「耳をすませば」
大切なことは耳をすまして
自身を見つめなおせば聞こえてくる
のような意味合いがあるかと思います。
そういうテーマとして本作に
耳をすまして見つめなおしてみると
原作漫画やジブリ要素を踏襲しながら
10年後という「新しい要素」を描くも
結局ラストは漫画、アニメに引っ張られ
同じ道を辿ってしまうような実写本作は
違和感を感じてしまった・・。
耳をすませど・・何も聞こえてこないような
何とも起承転結に納得感が薄い作品でした。
物語終盤までの「互いの夢を突き進む」という
新しい物語の締めくくりで良かったのでは?と
ラストの展開に首をかしげてしまった印象でした。
また余談ですが「はごろもフーズ」
これはある年代以上の方ならきっと・・。
ネットでも話題になっていてほっこり笑。
5つ星評価
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