本日のマンガ紹介は 「銭ゲバ」です。
○作者 ジョージ秋山
○出版社 小学館
○掲載誌 週刊少年サンデー
○発表期間 1970-1971
○巻数 文庫版 全2巻
■あらすじ
長野県松本市で生まれ育った蒲郡風太郎(がまごおり ふうたろう)は、左目に生まれつき醜い傷が有った。父親は最低のろくでなし、母親は気だては良いが病弱。それゆえ家庭は極貧で、ときには5円の金も無いほどであった。
貧しいながらも懸命に生きてきた風太郎にとって、心の支えとなっていたのは、母親と風太郎に優しく接する近所の青年であった。しかし、治療費が払えない母は病死、自暴自棄になった風太郎は盗みに走り、それを咎めた青年を手にかけてしまう。
それを機に、風太郎は生まれ故郷を飛び出し、成長して大企業の社長一家に取り入って、陰で金銭の為に殺人を繰り返すことになる。遂には、社長一家を死に追い込み、企業の乗っ取りに成功し、政界進出も果たす。しかし、栄耀栄華を極めた風太郎は、誰もが予期せぬ末路を辿ることになる。(wikipediaより引用)
~ジャンル分類~
お金と心の葛藤漫画
~要素方程式~
[絶望]×[狂気]×[壮絶]
=[銭]-[愛]
お金の価値や人間の本質について、
主人公蒲郡風太郎の葛藤を中心に
様々な事件や人間関係を経て
ひとつの答えを導き出します。
おそらく実写ドラマで知った方が
多くを占めるのではないでしょうか。
(自分も実写ドラマで多大な影響を・・)
異様なまでのお金に対する執着心と
そのきっかけをつくった痛烈な過去。
そういった苦悩を持った主人公が
孤独にテーマに向かうストーリーが
非常に痛々しく写る作品です。
~見所ポイント~
①主人公の魅力
お金と心、どっちが大事かっていうのは
マンガ、いやどんなジャンルでも
普遍的でありがちのテーマだと思います。
ただこの「銭ゲバ」の魅力的な部分は
「お金が一番」と、狂気的な人生を送り、
殺人、強姦、窃盗を繰り返す蒲郡風太郎自身が
心の奥底では幼少時代の
「心が大事」という
母の言葉に葛藤している部分です。
お金が大事と
怯むことなく動く主人公ではなく
「お金と心、どっちが大事か」と
人間の弱い部分、人間くさい部分を
確かに持つ主人公がこの作品の魅力。
蒲郡自身が
もはやお金と心どっちが大事なのかわからず
もがき苦しみ、お金を集めていくこの物語。
この壮絶で数奇な人生を描く展開が
一番の魅力と見所なんだと思います。
②独特な画風
客観的に見て決して上手い画ではないですが
ただ、危機迫る蒲郡のあの表情は
画力の上手さを超えた
インパクトが確かにあります。
幼少時代、実の父親にひどい仕打ちを受ける
蒲郡風太郎のシーン。インパクトのある画力だ。
③非常に重い内容
重いですね・・・。かなり重い内容です。
こんな重いテーマを週刊少年サンデーで
連載せていたことに驚きです笑。
蒲郡風太郎の泣いているのか笑っているのか
もはやどちらかわからないような
あの独特な画風で描かれる顔は忘れられない。
文庫版での上巻最後の方で蒲郡風太郎が
純粋な女の子、いわゆる「無垢」の存在に
信頼と愛を期待し、大きく精神が
傾く場面があるのですが
それも最後には
「お金のために体を差し出す」という
無垢な存在の否定、ひとつの真理すら
信じることはできず裏切られる。
こんなところは
太宰治の「人間失格」にも似た感情があった。
「信じられる」と心傾いたところでの裏切り。
こういう絶望のシーンは心に刺さります。
太宰治「人間失格」の葉蔵の言葉を借りるのなら
「世間一般の悩みは
外部に対して抗議することができるが
いわゆる、私のような
自分の罪悪から生まれた悩みは
外部に抗議することさえできないのです」
という感情に通ずるものを感じます。
「自分から生んだ
葛藤や悩みは自分でしか解決できない」
~注意点~
①話が重い
話は実に重く、展開も衝撃的なんだけど
あまりに主人公の狂気的な行動と性格に
読後感は結構な衝撃を受けますよ。
②前半と後半での違い
自分は文庫版で読みましたが
前半と後半でストーリーの質が変わります。
前半は
蒲郡風太郎の狂気的な人生が描かれ
後半は
政治家になるための醜い権力争いが描かれる。
個人的に前半までがすごく好きでした。
後半以降は蒲郡の葛藤や苦悩よりも
政治家になるための金や権力争いが中心で
ちょっと、前半と後半では
話の内容が違う印象があるかも。
ただ、最後の「終章その1~その5」は
絶大なインパクトがある。
この終章には本作品のテーマを
強く感じるラストが舞っているので
是非最後まで読み進めてみてください。
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「銭ゲバ」を一言で言うならば
「5円のお金が無いうちもあるのです」
これは、遅刻をしたときの罰金(校則)を、
催促しにきた先生に蒲郡の母が放った言葉。
この作品で、一番心打たれた名言です。
この言葉が銭ゲバとなり最後の結論を出す
蒲郡風太郎という男の人生の
「原点」のように感じました。
また、物語終盤
何百億というお金を手に入れた蒲郡風太郎が
新聞記事の「人間の幸福について」の
原稿用紙に向かうシーン。
彼はそこで最後の結論を出す。
あのシーンは非常に心打たれました。
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