本日のマンガ紹介は 「プラネテス」です。
○作者 幸村誠
○出版社 講談社
○掲載誌 モーニング
○発表期間 1999年 – 2004年
○巻数 全4巻
■あらすじ
時代は2070年代(2075年以降)。人類は宇宙開発を進め、月面でのヘリウム3の採掘など、資源開発が商業規模で行われている。火星には実験居住施設もあり、木星・土星への有人探査計画も進んでいる。毎日、地上と宇宙とを結ぶ高々度旅客機は軌道上と宇宙とを往復し、宇宙ステーションや月面には多くの人たちが生活し、様々な仕事をしている。しかし、長い宇宙開発の歴史の影で生まれたスペースデブリ(宇宙空間のゴミ。廃棄された人工衛星や、ロケットの残骸など)は軌道上にあふれ、実際にたびたび旅客機と衝突事故を起こすなど、社会問題となっていた。
また、地上の貧困・紛争問題は未解決のままで、宇宙開発の恩恵は、先進各国の独占状態にある。このため貧困による僻みや思想的な理由付けによるテロの問題も、また未解決である。
主人公のハチマキは宇宙で働くサラリーマン。主な仕事は宇宙のゴミ「デブリ」の回収作業。いつか自分個人の宇宙船を所有することを夢みている。ゴミ拾いは大事な仕事だと自分を納得させつつ、当初の夢と現実の狭間でこのまま現実を受け入れるか、それとも夢を追い求めるか思い悩む。 (wikipediaより引用)
~ジャンル分類~
近未来宇宙SF漫画
~要素方程式~
[宇宙]×[近未来]×[SF]
=[人類]×[愛]
人類が木星に到着するまでの近未来の間で
宇宙空間のゴミ(デブリ)を
回収する仕事に就く主人公ハチマキが
夢・愛・自分・生き方などなど
様々な葛藤を経て答えを出していく物語。
仲間の失敗による大気圏突入の危険に
必至の抵抗をするハチマキ。
ジャンルこそSF漫画ですが
テーマには人間愛や悶々とした葛藤など
哲学的なニュアンスを掲げている作風。
全4巻と短く、読みやすく。
それでいて多くのメッセージ性や
名場面も用意されていてるので
非常に読み応えのある作品になっています。
~見所ポイント~
①世界観の忠実さ
まずはこの漫画の世界観が2070年の
そう遠くない近未来であって
そしてSFというジャンル設定ながらも
デブリ回収作業という設定や
地球での日常場面を大切にしているところなど
忠実に世界観を守っていることに
作品としての魅力をしっかり感じます。
世界観を固めるために
冒頭ガチガチの説明漫画になるわけでもなく
じっくりと展開されるのは良いマンガの特徴。
人間的なストーリーから始まり
そして人間的なシーンで終わるので
ジャンルはSF漫画ではないのかもしれません。
②圧巻の文章力・センス
文章力というか作者ならではの伝え方というか
すごく作者様のセンスの良さに共感します。
宮沢賢治の詩がでてくるところなんかは
非常に作者様センスが理解できるような。
(自分も宮沢賢治の詩が好きなので・・)
文章力・センスが抜群すぎて
ここぞという時のセリフや会話が
どの場面でも洗練されていて心動かされます。
③テーマは・・
作品世界観やテーマは壮大で
作者様の伝えたいテーマはどこにあるか。
そのテーマは、宇宙空間を使って
「生きるとは何か」のような意義
普遍的なテーマを伝えようとしている。
そして物語後半からその答えのようなものを
「愛」というテーマで幕を閉じようとする。
まさにそんな感じです。
そして、そのテーマを伝える手段は
宇宙SFの世界観でありながら
日常シーンや人と人との対話なわけで
なんというか・・・
スケールが大きいのか小さいのか
よくわからない不思議な漫画です笑。
(絶賛の褒め言葉として・・)
④登場人物たちの魅力
決断や信念に迷いのないロックスミス
「姉さん」という言葉そのもののフィー
「愛」を迷い無く語るタナベなどなど
どうして4巻という短いお付き合いの中で
あそこまでキャラの性格が理解できてしまうのか
本作品隠れた一番の称賛するべき部分は
この登場キャラクターの魅力かもしれない。
ちなみにひとつだけ好きな話の紹介。
木星訓練チームで一緒だったレオーノフの
あの「ごめん・・・お袋」のシーンは印象的。
「宇宙に行くには人とのつながりがない方がいい
俺はお袋ひとりだし早く外(宇宙)に出たいんだ」
と豪語するレオーノフ。
そのはっきりと独りを決意するレオーノフに
「独り」が一番と考えていたハチマキは共感し
「オレみたいな奴もいるんだな」と見直す。
しかし事故で怪我をしてしまったレオーノフが
最後の最後に弱みを見せそれに動揺するハチマキ。
レオーノフを背負い助けを求める際中
レオーノフの本心の弱みに動揺するハチマキ。
夢のためにすべてを捨てたと言葉では言うものの
それがまだ本心でないと葛藤していた主人公の
価値観が一気に崩れさるあのシーンは秀逸。
~注意点~
①主人公の劇的変化
全体的に完成度が高すぎて
注意点など書いたら怒られそうで・・。
唯一挙げるとすると
全4巻のうち前半と後半で
あまりにも主人公が変化しすぎます。
主人公ハチマキのキャラクター登場から
それを応援して見ていた読者が
あそこで一気に置いていかれてしまった。
ここは正直に気になりました。かなり劇的です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「プラネテス」を一言で言うならば
「近未来宇宙のSF人間哲学」
全4巻ながら重厚で哲学的な世界観。
内容自体も非常に綺麗にまとまっていて
スケールを大きくしない、いや大きくみせない
この作風とセンスに感動です。
何よりこの「傑作」を作者様20代のとき
それも独り身のときに描いたということで
これはもう驚きと尊敬が溢れます。
まだまだ理解できないような場面
いや、年を重ねて再読した魅力を秘めていそうで
そういうマンガって「傑作」の証だと感じます。
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