本日のマンガ紹介は
「ジオラマボーイ パノラマガール」です。
○作者 岡崎京子
○出版社 マガジンハウス
○掲載誌 平凡パンチ
○発表期間 1988年
○巻数 全1巻
■あらすじ
ある日、女子高生であるハルコ(津田沼春子)は高校をやめたばかりのケンイチ(神奈川建一)と「具体的に」出会い、一目で恋に落ちる。それまで現実に意味などないとすら思っていたハルコだったが、運命の出会いを果たした相手と並んで歩く夜の街に奇妙な不安を覚えるとともにそれが気に入りはじめている自分に気づいた。「生きていてよかった」とすら思う。しかしケンイチはもう1人の「髪の長いキレイな人」に夢中で、2人が並んで歩く姿をみて目の前が真っ暗になる。しかも再会を果たしたときにはケンイチはもうハルコのことを忘れてしまっていた。(wikipedia引用)
~ジャンル分類~
ボーイ・ミーツ・ガール漫画
~要素方程式~
[男女]×[俯瞰]×[分解]
=[恋]-[主観]-[客観]
「pink」「リバーズ・エッジ」など
1980年から1990年代を代表する漫画家
岡崎京子さんの1980年代初期作品。
岡崎京子さん独特な世界観そのままで
描く本作は高校生の男女の出会いを描く。
運命の出会いで心躍らせるハルコ
刺激的で衝動的な行動を取るケンイチ
二人の高校生の出会いから始まる本作は
一筋縄ではいかない物語なのです。
2020年11月に実写映画化。
~見所ポイント~
①運命の出会いを信じるハルコ
女子高生のハルコは「つまらない毎日」に
どこか冷めて客観的に世界を見つめる女子。
そんなハルコはある日出会った
ケンイチという男の子に恋をして
退屈な日々から一変、心躍らせる毎日に。
しかしケンイチが「別の女の子」に夢中で
ホテルへ行ってしまう場面を目撃してしまい
その恋は一度バラバラに崩れてしまう。
ハルコの心情は1ページ1ページごとに
変わっていくほどに「不安定」で「不規則」で
岡崎京子先生特有の「性」や「恋愛」など
その独特でハイセンスな切り口は見所。
②刺激的で衝動的なケンイチ
外面は優等生だが、内面の心情は
刺激的で衝動的な行動を好むケンイチは
高校で先生を殴り高校をやめ
外でみかけた髪の長い女の子に声をかけ
衝動的な「性」や「恋愛」に突き進む。
ハルコとは運命的な出会いをしたものの
後に再会した際「ハルコ」の事を覚えておらず
そのままマンションの一室に拉致されてしまう。
ボーイ・ミーツ・ガールのジャンルですが
本作においては支離滅裂で逆行する展開です。
③本作の見所は・・
本作の見所はなかなか説明に困るけど
要約すると「恋愛・性の主観と客観」。
岡崎京子さんの「性」の描き方や
漠然とした「世界」への不安や不足感とか
支離滅裂な物語の「分解」や収束だったり
この文学的なセンスや世界観が
大前提の見所で魅力なんですが
本作はやはりハルコやケンイチのみせる
「主観」と「客観」の描き方なのだと思う。
ケンイチを拉致するものの
ケンイチが自分の事を覚えてすらないという
事実に自暴自棄になるハルコでしたが
それでも好きの想いはケンイチに伝える。
次々に揺れ動いてきたハルコの心情が
この場面では「主観的」なシーンとして描かれる。
その後ハルコとケンイチは情事を始め
ハルコは初体験をすることになるのですが
驚きなのはその初体験シーン。
たった数ページ前で「主観的」な想いを
ケンイチに伝えたはずだったハルコが
初体験シーンでは天井を見つめ
一生懸命な顔つきのケンイチを眺めながら
「つまらない」と驚くほどの「客観的」な
心情でセリフを淡々とつぶやいている。
それまでハルコやケンイチの
「主観」や「客観」の入れ替わる心情を
見守った読者は置いてけぼりになってしまう。
この物語の「分解」とも言える部分こそ
本作、岡崎京子さん作品の魅力なのだと思う。
④ハイセンスなセリフ
岡崎京子さんのその世界観を支える
そのハイセンスなセリフ選びも見所の一つ。
本当にこの「セリフ」の破壊力はすさまじく
その世界観は是非読んで体感して欲しい。
~注意点~
①テーマは放置される
文学的で深みのある作品ですが
テーマ・物語として「完成」されている・・
かと言えばその真逆で「未完成」です。
テーマをぶん投げて放置したような笑
支離滅裂で書き殴ったような展開は
決して物語として優れているかと言うと
そこはちょっと首を縦に振れないかも。
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「ジオラマボーイ パノラマガール」
を一言で言うならば
「男と女 主観と客観 あと俯瞰」
タイトルは作者自身が本や音楽から
感覚的に付けたと言われています。
また作中でもつぶやかれる
ジオラマ的な都市構造や規格化など
「人工的」な意味合いも含まれる。
そのうえで個人的な解釈。
ジオラマとパノラマ。
どちらも展示・写真などの用語ですが
ある一点から風景を一望できるパノラマ
ある一点を切り出して体感できるジオラマ
本作のテーマだと思う
「主観」と「客観」で言えば
主観:ジオラマ ⇔ 客観:パノラマ
そして本作の主人公二人で言えば
主観的で一点に突き進む
ジオラマ型な男の子:ケンイチと
客観的で一歩引いた視線に結局戻る
パノラマ型な女の子:ハルコ
本作テーマにマッチしたその言葉選びと
何よりその「展示」というその用語自体が
岡崎京子さん特有の「俯瞰的」な作風にも通じ
個人的に最高のタイトルだなと。
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