マンガ紹介「ひばりの朝」

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本日のマンガ紹介は 「ひばりの朝」です。

○作者 ヤマシタトモコ
○出版社 祥伝社
○掲載誌 Feelコミックス
○発表期間 2012年~2013年
○巻数 全2巻


■あらすじ
 手島日波里、14歳。同い年の子どもより、肉感的な身体つき。彼女を知れば、男はたいがい性的な感情を抱き、女はたいがい悪意の弾をこめる。彼女に劣情を抱いている男や、片思いをしている少年、劣等感を抱く女、そして彼女をおとしめたい少女が、ひっそりと、かつエゴイステッィに彼女について語り出す。
 彼女にまつわる心理展覧図はどこまでも広がるが、真実の正体は誰が知るのか?少女の正体は魔性か、凡庸か――(amazon内容紹介より引用)

~ジャンル分類~ 
多視点展開漫画 

~要素方程式~ 
[14歳女子]×[多視点]×[他人]
=[内面]×[闇]

主人公は同い年より身体つきが良く
無口で少し浮いている女の子。

この作品はそんな主人公を取り巻く人物達が
それぞれの内心を語っていく事で始まる。

出典:コミック「ひばりの朝」第1巻

一人の主人公を通した
数人の内心を語るオムニバス形式のような展開。

ひばりという14歳の少女を
取り巻く人間模様や心情から
「思う」「思われる」を
ぐるぐると繰り広げていくような感覚の作品。

~見所ポイント~ 

①多視点展開

まずは多視点で展開されていく
人間模様や構成が面白い。

ひばりという女の子が
本作品の主人公であり主人公でありながらも

物語のほとんどはひばりを取り巻く人間で
展開されていくような感じ。

出典:コミック「ひばりの朝」第1巻

・従兄弟でありながら
ひばりに自意識過剰になる男

・自分の価値を知りたくて
ひばりの女力に妬みを抱く女

・相手の噂や不幸が好きでたまらない
ひばりの同級生の女の子

・他人に興味がないが
ひばりは悪い人間でないと断言する教師


「ひばり」に対してどのような
内心、行動を取っているかが

一人1話ずつの短い間でスピーディーに
淡々と展開されていきます。

出典:コミック「ひばりの朝」第1巻

そこには人間誰しもが持ち合わせる
「闇」のようなものが見え隠れしている。

そしてそのほとんどは
「誰にも語らず内で完結してしまう」
という特徴がある。

だから人間の純粋悪というか
闇のようなものがまず読者に圧し掛かって

それでいて垂れ流しのまま終えてしまうので
まあ端的に言うと胸糞が悪いです(見所か?w)

②ひばりという女の子

本作品の一番の見所は、先に挙げた
「誰にも語らず内で完結してしまう」
という「純粋悪」が

ひばりという14歳の女の子に集中して
結論を求めるような展開にある。

出典:コミック「ひばりの朝」第1巻

ひばりにとっての
様々な行動、言動、表情などは
すべての人間に同じに伝わるわけはないし
伝わらない事だって多くある。

コミックの帯や見出しには
「少女の正体は魔性か、凡庸か。」と一言。

まさに少女は「悪」なのか「善」なのか
と、結論を求めるようなシンボル的な表現。
こういう視点が本作品の見所。

③魔性か凡庸か

ひばりという少女の善悪を
問いかけるような視点が見所であるが
「ひばりが善か悪かを読者それぞれが考える」
といった魅力ではないと思う。

それは1巻最後でそれまでシンボル的な位置にいた
ひばり自身の内心が語られてしまっているからで
全ての問いに答えてしまっている事で明らか。
(これは読んでいて驚いた展開でした)

出典:コミック「ひばりの朝」第1巻

ひばりは・・・・

・自意識過剰で
性的な視点になる男の気持ちもわかる

・女の子から好まれない容姿
雰囲気を持っていることもわかる

・自分自身のタイミングの悪さだったり
漠然とわからない不安だったり


ひばり自身の内心が語られてしまっているので

人間模様の中での
「思う」「思われる」とか「善」とか「悪」とか
実は完結してしまっているようにも思える。
(でもこれが第1巻での展開という事に驚く)

④自分と他人

ひばりは1巻最後にこんな内心を話しだす。

出典:コミック「ひばりの朝」第1巻

「親も先生もともだち・・・も
皆死ねって思っても全員殺してまわれないから
だからなんか あっ て 思ったんだ
けどそれって たとえば
あたしが死んだら全員消しちゃったのと
おんなにじことに なんないかなって
世界中の全員しねってゆう」


非常に退廃的で破滅的な感情を
絞りだしたように吐き出します。

この作品テーマが
「ひばりという少女は善か悪か」
でないとするならば

本作品の一番の考えるべき点は
「自分」と「他人」という視点ではないかと思う。

ひばりは、「皆死ね」っていう
純粋悪で「他人」を指すんだけれども

その「他人」はあまりに強大で
自分では消すことができないと感じる。

そして、消せないのなら
「自分」を消すことで解決するのではないかと。

要するにひばりは
「他人」への「純粋悪」というものを、
「自分」へ向け始めている。
正確に言うと「他人から見た自分の否定」

これは、誰しもが抱く可能性のある
恐ろしい感情だと思う。

~注意点~ 

①身を削られる 

人間の内心をそのまま
救いなく押し出されていくので
読んでいて心をえぐられます笑。

それはそれで魅力でもあるけれど。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ひばりの朝」を一言で言うならば

自分と他人を考える多面的ドラマ  

自分の人生哲学で偉そうに言わせてもらうと
「案外、自分の人生は他人が決めている」
という意識を強く持ってます。

本当の自分なんて
他人に伝わらなければないも同然だし
自分が伝えた感情が
他人に100%伝わる事も稀だと思う。

そんな中で「自分はどんな存在」
という気持ちを持ち始めたとき・・・

それを「自分」に押し込めるか
はたまた「他人」に委ねるのか。

ひばりは
自分の内心を吐き出した後、こうつぶやく

「あたしがわるいんです」

ひばりの脆く深い思考が
2巻への展開の肝になっていきます。

全2巻でありながら哲学を感じる描写に圧巻。
その結末はいかに。是非読んでお確かめを( ゚Д゚)


個人的好み度
 83%

( ゚Д゚)マンガ紹介一覧はこちら( ゚Д゚)


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