本日のマンガ紹介は
「イエスタデイをうたって」です。
○作者 冬目景
○出版社 集英社
○掲載誌 ビジネスジャンプ/グランドジャンプ
○発表期間 1998-2015
○巻数 全11巻
■あらすじ
大学を卒業したものの職に就くことなく、フリーターとして特に目標もないまま過ごしているリクオ。そんなある日、カラスを連れた黒ずくめの少女・ハルが現れる。彼女の破天荒な振る舞いに戸惑う中、リクオはかつての想い人・榀子が東京に戻ってきたことを知る。(wikipedia引用)
~ジャンル分類~
モラトリアム恋愛日常漫画
~作品要素~
世界観(world)
フリーター主人公テーマ(theme)
モラトリアム恋愛引力(catchy)
物語展開の遅さ
物語の大筋は、大学卒業後に
フリーターとして働くリクオが
ある日カラスを連れて登場する
ミステリアスな少女ハルと
一度告白をして振られて以降
友達以上恋人未満の関係の榀子との
のんびりとした
三角関係(いや五~六角関係?)
を描く恋愛日常です。
早川君は四人目の主要人物・・
と言えますが本紹介では割愛します。
リクオは榀子が好きで
ハルはリクオが好きで
榀子は過去に好きだった
幼馴染を無くし恋愛に後ろ向き。
そんな上手くいかない
いや、なかなか進まない三角関係を主軸に
主軸にも絡むサブキャラクター達を交えて
日常、恋愛、夢、青春、仕事などなど
モラトリアムたっぷりで描かれる恋愛劇です。
ちなみにタイトルの意味は
忌野清志郎が率いたロックバンドの
RCサクセションの曲から(wikipediaより)
~見所ポイント~
①不思議な少女ハル
物語冒頭、コンビニで働くリクオの前に
突如現れた不思議な少女ハル。
彼女はカラスをペットとして飼う
ミステリアスな雰囲気を持つ一人目のヒロイン。
ハルとリクオは実は過去に1回出会っていて
その出会いのきっかけも物語途中でわかることに。
ハルはリクオに好意を持っていて
リクオの榀子への想いを知りながらも
逆転を狙って健気にアピールしていきます。
普段はミステリアスで感情を隠し
少しとぼけた性格ですが
涙スイッチが入ると感情を表に出し
恋愛に対しては健気で尽くすタイプ。
まずはこのハルちゃんの魅力が抜群。
②過去を引きずる榀子
化学の高校教師をしている榀子は
リクオの告白を断るも
それでもリクオとの関係は崩さない
不思議な関係が続く二人目のヒロイン。
幼いころに好きだった幼馴染の湧を
亡くしたことをきっかけに
恋愛に対して積極的になれず
極端に恋愛反応が薄い特徴を持つ。
それでも少しずつですがリクオとの
友達以上恋人未満の状況が続く中で
少しだけ本当に少しだけですが
恋愛に対して一歩ずつ前進していきます。
この榀子さんは正直結構ですね・・
物議を醸しそうなヒロインでして笑
リクオもリクオなら榀子も榀子のように
(読んだ方しかわからない表現ですが汗)
まあこの二人の進展を気を長くして
ゆっくり見守れるかが評価の分かれ道です。
個人的には恋愛作品史上でも
稀に見る恋愛鈍足天然ヒロインに認定。
③3歩進んで2歩下がる
この作品の一番の魅力はたぶん
「進行の遅さ」なんでしょう。
この時点でここが良さと取るか悪さと取るかで
評価はぱっくりと二分してしまうんですが汗
とにかくこの作品は主人公や登場人物
その他もろもろ含めて恋愛進展がゆっくり。
リクオは榀子に対して想いは寄せているけど
なんだかんだハルの存在にも揺れ
ハルはリクオに対して積極的にアピールするも
するすると叶わず次第に失速し
榀子は過去を引きずるあまり
誰に対しても明確な答えを出せそうにない。
こんな三角関係は、きっと作品評価として・・
[純愛][片想い][急展開][失恋][惜別][ハーレム],etc…
どの恋愛ジャンルにも当てはまらず
この作品がどこに向かっていくか悩んでしまう。
でも自分はそれが良いなぁって思ってしまいます。
みんなそうなんじゃないでしょうか。
劇的な告白とか、運命の出会いとか
そういう「わかりやすい」展開ではなく
長々と悩んだり、告白できなかったり
時には考えるのを止めて過ごしたり
それが数年経ったりすることは変じゃない。
むしろそっちの方が現実的だったり。
この作品が目立つのは
そういう漫画的な展開をわざとすり抜けるように
本当にマイペースにシーンを切り取ることも無く
堂々と漫画内にずっしりと登場させる。
この読み応えが心地よい。
この作品の世界観にどっぷりとハマってしまう。
~注意点~
①足掛け18年の長々ストーリー
足掛け18年と言っても全11巻。
そう、不定期連載で年々刊行ペースが落ちて
いつ終わるのかと巷で騒がれていた本作品笑。
確か自分が大学生時代
舞台背景や題材内容がドストライクで
読み始めたのが当時で5,6巻くらい。
それから新刊を望んでも出てくるのは1~2年と
かつての魔方陣グルグル連載ペースを彷彿させる。
そして、こののんびりとした
刊行ペースと物語も重なるようにのんびりで
勇気出してみたり
悩んでみたり
何もしなかったりと
この「進行の遅さ」というものが
先に挙げたこの作品評価の分かれ道の
良さでもあり悪さでもあります。
漫画的な抑揚が本当に排除されていて
職人芸のように平らに削られているんですよねぇ。
連載という枠で考えるとかなり異例な進行劇。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「イエスタデイをうたって」
を一言で言うならば
「49%後向きで51%前向き」
この作品の第1巻コミックス裏のあらすじに
このワードがサラッと書かれているんですが
このキャッチコピーが素晴らしく
読んだ後は本当に的を得ていて納得の一言。
自分もその通りと感じています。
誰だっていつも前向きじゃあないし
ずっと後ろ向きなわけでもない。
少し進んで少し下がって
それでも最後は「ちょっと」だけ前進がある。
そんな「漫画らしからぬ」
進展の遅さと展開への不安を
「何も進まない」と飽きてしまうか
「少しだけ進んだ」と長い目で楽しむか。
そして最終話も作者のそういう姿勢を
連載枠のなかで突きとおしたからこそのあの展開。
自分はもうなんだかこの「進まなさ」が
自分の恋愛観や性格にドンピシャで
この作品の世界観に魅せられてしまいました。
現時点、恋愛漫画史上最も好きな作品です。
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