本日のマンガ紹介は
「夕凪の街 桜の国」です。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/夕凪の街-桜の国-211x300.jpg)
○作者 こうの史代
○出版社 双葉社
○掲載誌 WEEKLY漫画アクション
漫画アクション
○発売日 2004年10月
○巻数 全1巻
■あらすじ
広島原爆から生き延びた被爆女性と、被爆2世と言われる女性の物語。
~ジャンル分類~
原爆投下後の日常漫画
~要素方程式~
[原爆投下]×[広島]×[女性]
=[生]×[死]×[意味]
広島原爆投下における被爆した女性
平野皆実の数年後を描いた「夕凪の街」と
被爆二世と言われる女性石川七波の
子供・大人時代を描いた「桜の国」の物語。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/1原爆ドーム.jpg)
説明すると二本立てのような感じがしますが
「夕凪の街」の平野皆実の弟の旭は
「桜の国」でも登場し、その旭の子供が
「桜の国」の主人公である七波なので
舞台は少し違うものの
ストーリーはつながっていると考えてよいです。
多少読んでいて、家系図が欲しくなりますが笑
注意して読んでいればわかるので大丈夫です。
夕凪の街、桜の国(子供時代)
桜の国(大人時代)の計3部作ですが
総ページ数は100程度なので
非常に読みやすく、そして濃い内容です。
~見所ポイント~
①人に焦点を当てた
まず本作品一番の見所は
「人に焦点を当てた作風」かもしれない。
こういった作品の多くは
原爆シーンや恐ろしさの描写が多く
戦争教育に関して自分としては
「過去の惨劇や恐怖」を
現代の自分が知る意味がわからず
モヤモヤを持ってるし必要性を見いだせない。
しかしこの作品の神髄は
「原爆の恐ろしさや被害」を伝えるより
「原爆が人間に与えた心の傷」という
「人への焦点」が中心に描かれている。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/2橋の上の場面.jpg)
これは新鮮というか、これこそ・・
「原爆投下を後世に伝える意味」のような
戦争教育の真理と思ったわけです。
そうだ「原爆の恐ろしさ」じゃなく
「原爆が人間に与えたこと」が重要だ。
そういう意味では
ほとんどが日常の中の人間ドラマなので
押しつけがましくないというか
「戦争の向き合い方」「伝え方」に感心する。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/3バスの中.jpg)
作品中は原爆被害のシーンは少なく
原爆投下後の「人の想い」のような描写が多い。
幸せになることを恐れる皆実の想い
被爆二世としての意味を考える七波の想い
弟の手紙、凪生の想いと
それに立ち向かう東子の想い
本当に切実でそれでいて
温かくも感じる想いが見所。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/4手紙.jpg)
作者自身の想いもあとがきに書かれていて
戦争テーマに真摯に立ち向かおうとする想いに
心が打たれたし、好感が持てた。
②淡く古い画風
画風もまた個性的というか古臭いというか。
まさにこの作品のテーマにあっているような
どこか淡く、そして落ち着く画風です。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/5見開き.jpg)
特に上に乗せた見開きページは
かなり心を揺さぶられた。
原爆の集落で暮らしていた過去と
現在は野原になった場面の対比。
風が吹かない過去の夕凪の街と
風の吹く現代の野原。
この対比は見事。
ここは本当にすごい見開きで深い。。
③強烈な言葉群
総ページ100程度の物語の中に
すごく端的にまとめられたストーリー。
平野皆実の人生、七波の想いと
弟の凪生と同級生の東子の恋
どれも端的で心揺さぶられる場面が
ここぞと登場するのは作者の手腕が光る。
何より作品中の”想い”を表す
辛辣な言葉群は強烈で切実です。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/6ぜんたいこの街1.jpg)
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/7ぜんたいこの街2.jpg)
特に作品内の言葉群でも強烈だったのは
夕凪の街の平野皆実のこの言葉だ。
「嬉しい?
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
『やった! またひとり殺せた』
とちゃんと思うてくれとる?」
生きる意味を探していた平野皆実が
「死ぬ意味」もわからないという事実。
この台詞は自分には重すぎました・・・。
~注意点~
①楽しい漫画じゃない
「原爆が人に与えた傷」のようなものを
真摯に「漫画」という媒体を使って伝えている
”のみ”なので
漫画としての
「エンターテイメント」や「娯楽」はなく
そういう意味では、非常に重く、辛い読後感は覚悟して下さい!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「夕凪の街 桜の国」を一言で言うならば
「原爆投下が人に与えたこと」
原爆の恐ろしさではなく
原爆が人に与えたことを描くこの作品。
自分のモヤモヤさえも解決させてくれた
とてもいい作品だった。
まだまだこのテーマに関して
知識も感心も薄い自分ですが
やはり「人が死んだ」という事実に対して
どうゆう心構えを持っていくか。。。
少なくとも最低限の知識と
自分の意志を持っていかなければいけない。
個人的好み度 74%
コミックの品揃えが世界最大級の電子書店!
約9000作品の無料読み放題コーナーも充実!
電子書籍で購入なら《ebookjapan》がおススメ
コメント