本日のマンガ紹介は 「ぼくの地球を守って」です。
○作者 日渡早紀
○出版社 白泉社
○掲載誌 花とゆめ
○発表期間 1986-1994
○巻数 全21巻(文庫版 全12巻)
■あらすじ
1991年、東京の高校に転入してきた坂口 亜梨子は、クラスメイトの小椋 迅八と錦織 一成が交わす妖しい会話を立ち聞きしたのをキッカケに、2人が共有しているという夢“ムーン・ドリーム”の話を聞くことになる。ムーン・ドリームの中での2人はそれぞれ全くの別人、異星人の科学者であり、迅八は玉蘭、一成は槐という女性で、他の5人の仲間と共に“Z=KK101”と呼ぶ月にある異星人の施設“月基地”から地球を見守って暮らしているのだという。
その後、何かと亜梨子に絡んでくる隣家の7歳の少年小林 輪を預かった折に、亜梨子は誤って彼をベランダから転落させてしまう。輪は奇跡的に軽傷で済んだが、意識不明となり、亜梨子は回復を必死に願う。その祈りは強いテレパスとなり、輪は前世の記憶と超能力-“サーチェス・パワー”に覚醒。元気になった輪は「愛する亜梨子と婚約したい」と突拍子もない我儘を言って周囲を困らせる一方、裏では“Sくん”を名乗り、土建屋(ヤクザ)の息子松平 タカシを脅してタカシの親が施工する“東京タワー”改修工事にあるシステムを組み込ませようと強請るなど、深夜を中心に怪しい行動を人知れず繰り返すようになる。(amazon引用)
~ジャンル分類~
輪廻転生男女7人SF漫画
~要素方程式~
[輪廻]×[転生]×[男女7人]
=[前世]⇄[後世]+[月]⇄[地球]
1986年連載開始。
当時「前世ブーム」の後押しもあった本作品は
社会現象も巻き起こした。
年代的には2020年現在でアラフォー世代か。
自分自身はアニメ再放送が幼少期にやっていて
少しだけ記憶に残る程度の出会いでした。
話の大筋は
引っ込み思案な女子高生の「坂口 亜梨子」と
隣家の7歳少年の「小林 輪」との出会いから始まる
月基地で研究活動を続ける「前世の7人」と
地球で前世の記憶を夢でみる「後世の7人」が
それぞれの「記憶」と「想い」を繋げていく
男女7人が描く輪廻SFを舞台にした作品です。
非常に濃密な心理描写と壮大な輪廻SFで
展開されていく本作品は紹介が難しい(;´・ω・)
~見所ポイント~
①前世後世含めた計14人の心理展開
本作品の何が一番見所なのかと言うならば
前世7人(月)×後世7人(地球)の計14人が
それぞれ濃密な心理展開を繰り広げて
SF、日常、家族愛、恋愛、宇宙・・・
一言で言えば「濃密」と表現できる
壮大なSF物語という点を一番に声をあげたい。
宇宙空間(地球もその近辺存在)での
いくつかの惑星間での戦争をきっかけに
月基地での研究活動を始める7人。
そしてその研究基地で
各惑星が「全滅」、基地内では「伝染病」が発症。
絶望禍で7人は「地球」への想いを馳せる。
後世(地球)の「坂口 亜梨子」の自身の姿を
夢で見た事を話す前世(月)の木蓮(モクレン)。
地球7人と月7人は紹介しきれないですが笑
簡単に名前だけまとめると・・
読み始めは間違いなく「相関図」が欲しくなる。
特に「心理描写」のその濃密さは圧巻。
これはある意味女性作者らしさの魅力か。
とにかく丁寧で多視点な展開は驚嘆。
良い物語は「生きたキャラが自然に創り上げる」
という言葉があるように本作品はまさにそうで
個人的には本作品の「熱量」と「濃密心理」は
長い連載で登場キャラが作り上げた作品だと思う。
おおまかな作者プロットはあると思いますが
そのプロットを繋ぐ展開はキャラが押し上げ
まさに奇跡的で生きた展開が創った名作だと思う。
②「坂口 亜梨子」と「木蓮」
「坂口 亜梨子」は引っ込み思案な女子高生。
不思議な前世の夢を見た事をきっかけに繋がる
他6人の男女との出会いで自身の前世の秘密にも
当初は戸惑いながらも、その記憶に立ち向かう。
前世の特殊な力を引き継いでいるのか
「植物の気持ちを理解する」という能力を持ち
この能力は輪廻や物語にも大きな意味を持つ。
前世は生物学者で動植物への感情共有が可能な
「キチェ・サージャリアン」という聖女と扱われる
「木蓮(モクレン)」という女性になります。
自身の「聖女」という特殊な存在に対する葛藤を
後に月基地研究で出会う紫苑と分かち合い
二人は恋に落ち正式な夫婦にもなります。
悲しくも基地内の伝染病で最後に
生き残る二人がこの木蓮と紫苑になります。
③「小林 輪」と「紫苑」
「小林 輪」は女子高生の亜梨子に
密かに想いを寄せる7歳の少年です。
物語序盤から前世:紫苑の記憶が交じり合い
後世(地球)でも前世の特殊能力を使い
月基地の「ある装置」を発動させるキィ・ワードを
他6人から聞き出して集めようと奮闘します。
前世では紫苑(シオン)という
惑星間の戦争孤児として育て上げられ
孤独で内心は愛を求めた幼少期を過ごした少年。
孤独な幼少期から攻撃的な性格で
協調性も欠ける存在で、後の月基地研究でも
他のメンバーと衝突が多く問題児に。
月基地で出会ったキチェの木蓮には
その「特別な存在」に嫌悪感を持っていたが
木蓮の包み込むような存在に惹かれる。
月基地での伝染病では愛する木蓮を看取り
基地で最後に生き残った1人として
他の6人が知らない「空白の時間」を過ごす。
この「空白の時間」のずれが影響して
後世の亜梨子(木蓮)よりも後に転生したことで
後世(地球)では年齢が前世よりも離れてしまう。
④多視点×他視点
多視点で他視点です。
はい、そんな感じです笑。
物語終盤。
紫苑(シオン)は惑星戦争という
同じ過ちを地球で起こさないように
研究していた内容で「ある装置」を製作。
その前世の記憶が蘇るなかで
その月基地を爆破するべきかと葛藤する輪。
物語では前世と後世の記憶に戸惑い
錯乱しながらも繰り広げられる心理描写は
息を呑む場面で世界観に引き込まれる。
月基地の各登場人物7人それぞれの想いは
美しく宇宙空間に残った「地球」に移り
そしてその想いは「輪廻」として
後世の7人へ受け継がれていきます。
前世7人と後世7人という「多視点」だけでも
すでに異常で緻密な心理描写が圧巻なんですが
本作品では月基地での場面が、
木蓮と紫苑の別視点で描かれたり
地球と月という対比の演出だったり
そういう「他視点」でも展開されるので
この「濃密さ」は本当に驚かされると思う。
~注意点~
①とにかく濃密です・・
とにかく「心理描写」が丁寧で濃いので
文章量も小説のような重量感。
そして複雑な視点や男女の愛憎劇など
決して「読みやすい」とは言えない部類です。
ここはある意味では「覚悟」が必要な
情報量だと思うので注意です。
かなり疲れます笑。頭も使います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ぼくの地球を守って」を一言で言うならば
「二人のぼくとひとつの地球」
多視点×他視点
心理描写×文章量
輪廻×SFサスペンス
恋愛×家族
とにかく「濃密」と連呼したくなる笑
完成度も情報量も素晴らしい名作です。
月基地の絶望のなかで「地球」を
惑星戦争の同じ過ちから守りたい紫苑と
後世(地球)で亜梨子と出会い
未来へ希望を持ちながらも前世の記憶と
基地爆破に葛藤しながら地球を守りたい輪。
同じ「地球」を想う二人の行動は
運命のいたずらか全く正反対で矛盾を生む。
タイトルの「ぼく」は紫苑と輪の
二つの視点が混ざり合う意味も含まれ
まさに本作品の他視点という要素
そしてテーマの主軸は「地球」にあること。
タイトル意味や伏線回収も見事で素晴らしく
語り継がれる名作だと素直におススメします。
個人的好み度 91%
コミックの品揃えが世界最大級の電子書店!
約9000作品の無料読み放題コーナーも充実!
電子書籍で購入なら《ebookjapan》がおススメ
コメント
[…] (「僕の地球を守って」参考:http://manga-beta-beta.com/post-8276/) […]