本日のマンガ紹介は 「pink」です。
○作者 岡崎京子
○出版社 マガジンハウス
○掲載誌 NEWパンチザウルス
○発表期間 1989年
○巻数 全1巻
■あらすじ
お昼はOL、夜はホテトル。欲しいものを買うためにはお金がいる。そんな単純なユミコは、アパートの一室で大好きなワニと同居している。母親が自殺した後の新しい義母と、その娘のケイコ。そして義母は若い男ハルヲを買って飼っている。
後にハルヲとユミコは出会い互いを好きになり同棲する。そのことに腹を立てた義母は、ユミコの大切なワニをどこかに連れ去ってしまった。そして物語は急展開を迎える・・・。
~ジャンル分類~
立ち止まれる日常漫画
~要素方程式~
[虚無感]×[雑画]×[フワフワ]
=[資本主義]×[売春]
あらすじは意味不明かもしれませんが笑
要約すると本当にそんなストーリーです。
主人公のユミコは、ワニを飼っていて
そのワニの餌代がばかにならないので
OLの他にホテトル(売春)をやっている。
欲しいものがあるから、売春をしている。
そんなことに何の疑問も持たないユミコは
妹のケイコ、義母、義母の愛人ハルヲとの関わりで
今日もお昼にOLして夜は売春をしていく。
なかなかレビューに困る作品なのですが・・
テーマをざっくりと要約するなら
「資本主義」「虚無感」「シアワセ」の三つ?
うん、わからないです笑。
~見所ポイント~
①ワニとユミコ
わがままで、幼稚で
ストレートな性格のユミコは
大好きなワニを飼っていて
エサ代が必要だから売春する。
雑誌のワンピースはかわいければ買うし
部屋をジャングルにしたければ植物を買うし
大好きなピンクの花のためならなんだってする。
物欲を消費するため
その対価として体を売って報酬を得る。
そんな女の子だ。
売春をすることにユミコは何の疑問も持たない。
同僚のOLの何気ない世間話の
「お金が欲しい」「玉の輿に乗りたい」という
そんな発言に疑問を持ってしまう。
ふと立ち止まってしまう。
「お金が欲しいなら売春すればいいのに」
「我慢できない自分がおかしいのかな」
果たして同僚とユミコのどちらが正常なのか。
作品のあとがきに
「すべての仕事は売春である」と書かれ
資本主義もそうだとつぶやかれている。
資本主義では、自分(肉体や精神)を売って
その対価に報酬を得て、そして幸福を得る。
つまり売春もその他の仕事も
[自分を対価に報酬を得る]という面では同じだ。
「すべての仕事は売春」であるとは
そういう資本主義のことを言っている。
そういう漠然とした虚無感は誰しもが感じている
もしくは知らないふりをしていて
そこにユミコは、度々立ち止まってしまう。
この「立ち止まってしまう瞬間」というものが
まずこの作品の見どころでそれは「発作」のよう。
②シアワセって
ユミコと同棲するハルヲは
切り張りで作った小説で桜桃賞を取ってしまう。
そして「こんなに幸せでいいのか」
・・と、立ち止まってしまう。
ユミコは「シアワセ」になることに
何の疑問も不安も持たない。
物語後半、資本主義で感じる
「対価」という虚無感のようなものが
ワニ行方不明によってわかりやすく登場して
読者に覆いかぶさってくる。
行方不明直前、ワニは・・
「きっと主人が南の島に連れってくれる」
という[対価]の為に主人は食わないとつぶやく。
物語終盤まで一切しゃべらなかったワニが
非常にドライな感情しかないことに衝撃を受ける。
ワニとユミコが結んでいたものは
「対価」だったのだろうか。
それじゃあハルヲとの愛や
何かの幸せも「対価」なのだろうか。
そんな虚無感が次第に高まっていく中で
最後の怒涛のラストで、最高潮に虚無が迫ります。
~注意点~
①ちときつい性的表現
物語中は非常に性的な描写が出てきます。
画自体は雑なので大してきつくないんですが
ちょっと「ん~」と思えるような・・・
嫌な表現と感じるところもあるので
そういうのに抵抗がある人は注意です。
言葉も結構汚いです(汗)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「pink」を一言で言うならば
「虚無感の正体はなんぞや」
「すべての仕事は売春である」
「幸せを恐れる者は、幸せになれない」
こんなテーマが
ユミコの頭の中でぐるぐる回ってくる。
ユミコちゃんは普通の女の子のはずだ。
それでもほとんど共感できない彼女には
自分たちと何が大きく違うのだろうか。
この作品は「ふと立ち止まってしまう」
という瞬間を作品内に多く登場させている。
でもふと自分の人生シーンを切り取ってみると
「立ち止まってしまってはいけない部分」 も
世の中には多いのかもしれない。
物語中で言えば資本主義やワニもそう・・
ハルヲが「人間の手も良く見ると気持ち悪い」とか
ユミコの同僚の「オゾン層破壊で星が綺麗に見える」とか
「立ち止まってはいけない部分」というものが
どことなく不安と共感を生む瞬間が本作品の魅力。
そしてユミコに全く共感できなかった読者も
読後はふと立ち止まって考えこんでしまうはず。
たまには人生、「立ち止まる」のも悪くない。
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