本日のマンガ紹介は 「ぼくんち」です。
○作者 西原理恵子
○出版社 小学館
○掲載誌 ビッグコミックスピリッツ
○発表期間 1995~1998年
○巻数 全3巻(全1巻版有)
■あらすじ
「ぼくのすんでいるところは―/山と海しかない しずかな町で―/はしに行くとどんどん貧乏になる。/そのいちばん はしっこが/ぼくの家だ―」。腹違いの兄、一太。突然現れた、美しくてやさしい年の離れた姉、神子(かのこ)。そして「ぼく」、二太。クスリを売る。体を売る。金を貸す。とりたてる。この町の多くの大人たちは、そんなふうにして生きている。
~ジャンル分類~
劣悪貧乏街日常漫画
~要素方程式~
[劣悪環境]×[絵本]×[暴力]
=[ギャップ]×[衝撃展開]
全3巻。
見開き1話構成の絵本チックな漫画。
内容はどうしようもない貧乏街で
強く生きようとする兄弟と
ある日突然お母さんが連れてきた姉との
日常がメインのお話。
絵本のような雰囲気とは裏腹に
内容は不幸で劇的で見ていて辛い。
そんなギャップや所々の重いセリフが
ピカイチに光るそんな漫画です。
~見所ポイント~
①重く、劇的で、強い
まずはこの物語の主人公の
男兄弟が住んでいる貧乏街は
非常に劣悪で環境が悪く
住んでいる人間も普通ではない奴らばかりだ。
シャブやら盗みを続ける兄ちゃんやら
部屋で死んだ親父を間近に寝る少女とか
とにもかくにも
絵本のような画風で
内容は最底辺でゲスい。
ただそんな劣悪な環境下にいても
登場する人物はとにかく強くたくましく
そしてもれなく笑顔なのである。
そんな人間の強さというか弱さというか
「人間味」を強く感じるところはすごく見所。
心にズシンと来る場面は本当に多い。
②強い笑顔
基本的には人間は
「幸せ」になろうと生きるはずだと思う。
それでも
自分自身の問題だったり
劣悪な環境だったり
色々な理由でそう簡単に
「幸せ」ってのがやってくるとは限らない。
この漫画作品でも
劣悪な環境化にいる登場人物達は
決して幸せとは言えない状況化にいて
読んでいて辛い話しばかりだ。
それでも驚くばかりか
登場人物達には常に笑顔がある。
それも半円の線の目に
上がった口角だけの記号のような笑顔だ。
その笑顔は
普通に見れば単純な笑顔だけれども
内容が内容だけあって
その単純な笑顔に潜む感情は
読者それぞれが違う意味を持つし
絵本画風と辛い内容のギャップは強い。
③幸せって・・・
結局のところ「幸せ」ってのは何なのか。
物語終盤
離ればなれになってしまうだろう
そんな兄弟たちの予感の中・・・
かの子姉ちゃんは
「昔に幸せを埋めたというタイムカプセル」
を浜辺に探しに行くが・・・
それを見つけることができずに
佇むシーンがある。非常に見ていて辛かった。
基本的にこの漫画作品に登場する人物達は
劣悪な環境にいつつも、芯は強く
たくましく生きている事は間違いない。
幸せかどうかは別として。
事実この作品内では明確に
「幸せ」を手にしている人物はいないと思う。
~注意点~
①不幸自慢
「劣悪な環境化で、それでも必死で生きる」
という内容の印象が強い為
「不幸自慢」や「お涙頂戴」のような
嫌悪感を感じる可能性はある。
かなり振り切れているので賛否両論はある。
そしてそれに拍車をかけている
「絵本のような画風」のギャップも
「狙っている」という印象を持つとそこでアウト。
決してそれが「作者の狙い」ではなくとも。
②下ネタ、暴力、性的内容
内容がとにかく重くてゲスいです。
ただ、兄弟の一太と二太にお母さんが
名前は「私に乗った男の順番や」など
ブラックジョークのキレは見事で面白い笑。
基本的には内容は重く
読んでいて辛いのはしょうがない・・か。
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「ぼくんち」を一言で言うならば
「しあわせってなんやろう?」
絵本のような画風と
恐ろしい劇的内容のギャップが印象的。
劇的な内容の中で見せる
記号のような笑顔をどう読みとるか。
読者に委ねられている所が大きく
すごく脳内をかき回す内容です。
裏を返せば
明確な結論もなければ表情も記号のようで
作者の投げっぱなし、不幸自慢な印象で
そのまま終えてしまう可能性もある。
賛否両論があるだろうこの作品。
最後の最後の、本当の最後の1コマ。
「こうゆう時は、笑うんや」
二太のあの笑顔を
「強い」と思うか「悲しい」と思うか
結局この作品の魅力は
そういう「読みとり」なんだろうと思う。
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