本日の映画紹介は
「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」です。
○原作 暁佳奈
○監督 石立太一 ○構成 吉田玲子
○キャラデザ 高瀬亜貴子
○音楽 Evan Call
○製作 京都アニメーション
○封切日 2020年9月18日
■あらすじ
2018年にテレビ放送された京都アニメーションによる人気アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の完全新作劇場版。
戦時中に兵士として育てられ、愛を知らずにいた少女ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、「自動手記人形」と呼ばれる手紙の代筆業を通じて、さまざまな愛のかたちを知っていく姿を描く。人々に深い傷を残した戦争が終結して数年、世界は少しずつ平穏を取り戻していた。新しい技術の開発によって生活も変わり、人々は前を向いて歩み始めた。ヴァイオレットも大切な人への思いを抱え、その人がいない世界を生きていこうとしいてた。しかし、そんなある日、一通の手紙が届く。(映画.com引用)
2018年アニメの続編である「劇場版」として
昨年の放火事件や今年のコロナ禍など影響もあり
二度の延期からいよいよ公開となった本作品。
話の主軸は郵便会社に勤める「代筆」を
サービスと扱う「自動手記人形(ドール)」の
ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンという女性が
かつては戦争孤児として軍人であった自分に
生きる道を与えてもらった恩人ギルベルト少佐を
戦争で行方不明で離れ離れになってしまい
代筆という業務を通しながら少佐からもらった
「愛してる」の言葉の意味を理解する物語。
~映像・音楽~
監督・音楽などはTVアニメシリーズ同様の
製作陣で、もう素晴らしいの一言なので割愛。
(記事最下部のアニメ紹介記事リンクへ是非)
京都アニメーションの「最大限」の映像美は
作画、背景、描写、間、色彩、演出・・・
どれを取っても不足なくどれも見所で。
3Dの良さを活かし
2Dの魅力を最大限引き出して
2,5次元とも言えるそのアニメ創作は
是非見て感じて欲しい本作品。
~演出・時間~
上映時間は140分の大ボリューム。
まずは冒頭。
アニメでも泣ける話で人気の「アン」の
孫であるデイジーという女の子が登場。
そして時が経ったその時代点から
自動手記人形が全盛期だった時代を遡るという
アニメ続編のストーリーと時代経過を繋げる演出。
もう開始5分で「アン」の回想を出して
いきなり涙ぐませてしまうのはずるい演出笑。
その他でもアニメシリーズ登場の様々な物語が
本作品のストーリーと少しずつ交錯して描かれ
アニメの純続編でありファンの心をくすぐる演出。
本作品の主軸は言うまでも無く「ギルベルト少佐」
物語は、あるきっかけでギルベルト存命の
可能性を知って島を訪れることで動き出す。
~見所ポイント~
①ユリスという少年の代筆
物語の中盤までは「ユリス」という
病弱で家族や友達に素直になれない少年が
自身の死を悟り、死後に渡す手紙の代筆という
アニメシリーズの「アン」同様の物語は
もうわかっていても泣いてしまうストーリー。
個人的に演出で見所なのは
この時代線で「電話」や「電波塔」の普及で
少しずつ「代筆」という時代の衰退が見えるなか
少年ユリスは家族への代筆は終えたが
友達リュカへの手紙は死の直前まで書けず
それでも「電話」という新しい機器により
直接想いを伝えて天国へ向かうことができた。
本作品冒頭の「時代の変化」「現在と未来」
この対比を「手紙と電話」という演出で
感動につなげていく展開が本当に良かった。
②ギルベルト少佐への手紙
最大の見所で最大のネタバレですが
ギルベルト少佐は戦争の行方不明後に
ある島でひっそりと暮らし存命していた。
原作小説では「列車ハイジャック」のストーリーで
ギルベルトとヴァイオレットは再会を果たすので
実はアニメシリーズですでに原作とは違う展開で
ギルベルトが存命という部分は原作に同じ。
(小説完結編は未読なのでその後は不明ですが)
そしてギルベルトの住む家の前にやってきた
社長とヴァイオレットであったが、ギルベルトは
自身がヴァイオレットを戦争へ導いてしまった
罪意識から「会えない」と一蹴をしてしまう。
ヴァイオレットは会えないギルベルトへ
「最後の手紙」を人づてでギルベルトへ渡すが・・
ここからの最後までの演出は割愛しますが
最後の泣きじゃくるヴァイオレットの場面は
京アニ2,5次元の「完成形」を見れたと!!
とにかく原作小説、アニメ、映画外伝と見て
この劇場版という「完結編」で綺麗に幕を閉じ
2020年アニメ映画の傑作としておススメします。
③水の演出
昨今のアニメ映像美の指標のひとつ?
にもあがっている気がする「水」表現。
アニメシリーズでも水の演出は美しかったが
本作品では「雨」と「海」など
物語のターニングポイントとしても
重要な役割を持つ「水」の表現は特に必見。
~注意点~
①本当に一点だけ!!
京アニ最大限クオリティで
万人におススメできる傑作ですが
ただひとつ!ただひとつ・・・
ギルベルトはヴァイオレットを
戦争へ導いてしまったという
「罪の意識」から再開を拒む事になるが
ヴァイオレットの健気の想いを前にしても
どこか女々しく幼く見えるその「感情」が
原作小説やアニメシリーズとしてみても
ギルベルト少佐の「強さ」が欠けるような
かなりの「弱さ」を感じる印象が強かった。
この「弱さ」は決して悪いとは言えないんですが
原作小説を読んでいる身としては違和感があって
「ギルベルト女々しいぞ!」と思ってしまう汗。
(まあこれは結構に賛否両論出るんじゃないか)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
を一言で言うならば
「心からあいしてるを伝えた物語」
本作品冒頭に「sincerely(心から)」
本作品最後に「あいしてる」
かつて戦争孤児から生きる道筋を与えられ
命の恩人であるギルベルト少佐への
「あいしてる」を探すヴァイオレットの物語は
ギルベルトへの「あいしてる」を
心から伝えることができ完結しました。
とりあえず涙無しでは本当に見られない。
美しく素敵なこの物語は2020年傑作の太鼓判。
また、昨年の放火事件という悲惨な出来事で
亡くなってしまった製作者の皆様に対しては
ご冥福をお祈りしますと同時に
こんなにも素敵なアニメ作品を生み出し
多くの人へ「感動」を届けてくれた関係者皆様に
心から感謝申し上げます。ありがとう。
5つ星評価
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