本日のマンガ紹介は 「ばるぼら」です。
○作者 手塚治虫
○出版社 小学館
○掲載誌 ビッグコミック
○発表期間 1973-1974
○巻数 全2巻(文庫全集 全1巻)
■あらすじ
小説家・美倉洋介は耽美派の天才として名声を得ていたが、異常性欲の持ち主であることに日々悩まされていた。ある日、新宿駅で彼はアルコール依存症のフーテン娘・バルボラと出会い、彼女をマンションに居候させることとなる。バルボラはことある毎に美倉のマンションを出るが、そのたびにまた彼の家に居ついてしまうのだった。やがて美倉は、ミューズの末妹かつ現代の魔女であるバルボラと、彼女の母ムネーモシュネーを通じて、黒魔術世界とかかわりを持つようになっていく。(wikipedia引用)
~ジャンル分類~
退廃的エロティシズム奇譚
~要素方程式~
[退廃]×[エロス]×[怪奇]
=[小説家の男]+[フーテン女]
言わずと知れた漫画の神様「手塚治虫」の
作品群のなかでも「異色」と称される本作は
1970年代に大人向け作品として連載され
退廃的でエロティシズムに包まれたような
手塚治虫作品とは思えない「闇」が潜む。
物語は「異常性欲」を持ち合わせた
売れっ子の小説家「美倉洋介」という男が
ある時新宿駅で座り込みうずくまる
乞食のような風貌の「ばるぼら」という女と
出会い、そして狂気と愛欲の世界に
落ちていく様を描く退廃的雰囲気漂う作品。
2020年11月に実写映画化。
そんな話を耳にしなければ本作品の存在は
知らないままだったのかと思う。
~見所ポイント~
①美倉洋介という男
売れっ子小説家で耽美派、芸術を追い求め
富や名声を手に入れた順風満帆と思えるも
自身の「異常性欲」という悩みを抱えるなか
ばるぼらに出会い、退廃的、狂気的な世界に
次第に引きずり込まれていく。
作品内で「異常性欲」の詳細は語られないが
マネキン女性や雌犬とのセックスを幻想として
区別がつかなくなる、精神的な崩れの描写など
「異形性欲」とも言える性癖を持ち合わせる。
ばるぼらの存在により「創作」への活力が漲るも
ばるぼらの母「ムネーモシュネー」との出会いから
次第に破滅や狂気の世界に引きずり込まれていく。
②ばるぼらという女
新宿駅で美倉洋介に拾われてから
家に住みつき洋介に居ついてしまう
自堕落でアルコール依存の女「ばるぼら」。
時代を象る言葉で言えば「フーテン女」
出会いの当初はつかみどころのない性格で
美倉洋介をかき回して困らせる行動を取るが
母:ムネーモシュネー登場から
その謎に包まれる素性や奇怪な行動など
彼女のミステリアスさは一層目立ってくる。
③様々なテーマが見え隠れする
本作品、端的に言えば
退廃的でエロティシズムに包まれる
男女の愛欲と芸術の真理が主軸に感じるが
物語後半からのオカルトや黒魔術
退廃的で狂気的な男女の逃避行
ギリシャ神話など手塚治虫先生らしい面
内容は非常に複雑で濃いので
読むのにパワーが必要な見所が多い。
そのなかでもやはり本作は
洋介の「異常性欲」
ばるぼらの「ミステリアスな魅力」
男女の愛欲は目の離せない見所です。
ばるぼらという自堕落なフーテン女が
ある時突然に「ひとりの女性」として
受け入れる洋介のシーンは圧巻。
ギリシャ神話にもとづくと
ばるぼらは「芸術を司る女神」で
母のムネーモシュネーは「記憶を神格化した女神」
物語後半から一気に揺れ動くその様は
ここでは語りませんが圧巻で必見。
~注意点~
①後半からのオカルト
ばるぼらという女のミステリアスな面が
母のムネーモシュネー登場から際立ってくるが
当時のオカルトブームもあってなのか
黒魔術や呪術など「その類」の話が色濃くなり
ちょっと世界観についていけなくなる面が。
個人的にはギリシャ神話の話で止めて
その「ミステリアス」と「狂気」を強めて
ラストに向かった方が良かったかなと。
②手塚治虫作品群でも異色
退廃的、エロス、狂気、愛欲、オカルト
とにかく手塚治虫作品群でも「異色」な作風で
個人的には衝撃を受けてしまった作品でした。
内容も限りなく「黒」に近い作風なので
どんよりと薄暗いその世界観は強烈で注意。
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「ばるぼら」を一言で言うならば
「男女の愛欲と芸術の真理」
男女の愛欲という
エロスと狂気を描く一面と
芸術の真理という
創作的かつ懐疑的な一面を
オカルトやギリシャ神話など
神秘的な要素で描いた本作品は
手塚治虫作品でも「異色」で間違いない。
ばるぼらという女に出会った
ひとりの男が歩むその道の最後は
幸か不幸か、その目でお確かめを。
個人的好み度 69%
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