本日のマンガ紹介は 「リバーズ・エッジ」です。
○作者 岡崎京子
○出版社 宝島社
○掲載誌 CUTiE
○発表期間 1993-1994
○巻数 全1巻
■あらすじ
河口にほど近く、広く、ゆっくりと澱む河。セイタカアワダチソウが茂るその河原で、いじめられっこの山田は、腐りゆく死体を発見する。「自分が生きてるのか死んでるのかいつもわからないでいるけど/この死体をみると勇気が出るんだ」。 それぞれに重い状況を抱えた高校生たちがからみ合いながら物語は進行する。
~ジャンル分類~
退廃的日常漫画
~作品要素~
世界観(world)
河口近くの高校テーマ(theme)
欲望引力(catchy)
河原の死体岡崎京子の代表作。
と言われる本作「リバーズ・エッジ」。
話の本筋は工場地帯の河口近くの高校が舞台の
高校生数人の退廃的世界観で描かれる物語。
物語は、いじめられっこの山田君が
若草ハルナに河原の死体を見せることで動く。
非常に退廃的な雰囲気を持つ作品で
見ていて良い気持ちにはなりません。
それでも、誰しもが感じたこと
または考えないようにしてきたことが
本作品では退廃的に描かれていく。
一種の文学的な面を感じる繊細さがある。
~見所ポイント~
①欲望のままに
本作品の一番の見どころは「欲望」だ。
これは岡崎京子さんの作品の
一貫したテーマなんじゃないかと思う。
本作品で登場する人物は
明らかに常軌を逸している面が多々描かれる。
それは「欲望」のままに動き出し
焦点の当て方が劇的で直接的。
唯一、本作品中の若草ハルナは
「欲望」から離れた存在だけれど
ハルナの彼氏の観音崎君は
「支配欲」「性欲」に溺れているし、
山田君を好きな田嶋カンナは
自己中心的な「独占欲」に溺れ
一方的な感情しか持てず壊れていく。
とにもかくにも「欲望」そのものしか
持たない登場キャラにまず圧倒されるだろう。
そして本作品に「引力」を感じるのは
それと対照的な「無欲」に限りなく近い
登場キャラが対比として登場することで
哲学的な一面を魅せるところにある。
ここで言う無欲なキャラとは
いじめられっこの山田とモデルの吉川こずえ。
共に、河原での死体の存在を知る二人。
死体が宝物の二人だ。
②欲望、世の中、矛盾、実感
いじめられっこの山田君は作中こうつぶやく。
「自分が生きているのか死んでいるのか
いつもわからないでいるけど
この死体をみると勇気が出るんだ」
山田は現実世界に興味を持たない。
というより「実感」がないのかもしれない。
山田は「死体」には実感を感じるのだという。
おそらく「死体」には「欲望」がないからだ。
山田が現実世界に興味を持たないのは
そういう「欲望」を恐れている、または…
心底嫌っているからなのかもしれない。
一方吉川こずえは
「死体」を見た感想を「ザマアミロ」と話す。
吉川こずえも世の中の「矛盾」、
現実世界に興味がないのだろう。
この作品中に出てくる「死体」は
まさに「欲望」「無欲」でも何物でもない
この作品のテーマを象徴する絶対的存在で・・・
各キャラがこの「死体」を見て
「どう思ったか」が読者に投げかけられる。
③深く対照的な構図
欲望のままにその身を滅ぼす
「観音崎」と「田嶋カンナ」
欲望に振り回されず淡々と佇む
「山田」と「吉川こずえ」
その狭間にいて「わからない」と悩む
「若草ハルナ」
何も話さない、何の欲望もない
何物でもない「河原にある死体」
この「構図」と登場人物達の「心情」。
この2点は一種の「純文学的」な一面があり
抜け出せない「引力」を持った作品だと思う。
~注意点~
①欲望のままに
読後感はさすがに気持ち悪いです。
「欲望」だとか「生きる理由」だとか
漠然とした恐怖経験を持つ人にとっては
ものすごく影響のある作品になり得るし
何も考えず淡々と読んでいけば
ただの気持ち悪い物語で幕を閉じる可能性も。
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「リバーズ・エッジ」を一言で言うならば
「あなたは死体を見て何を思う?」
このテーマに関してなら
本作品の右に出るものはないんじゃないか。
物語中盤、水族館で魚が水槽で泳ぐ姿に
何か矛盾を感じる山田君。
同作者作品の「pink」でもあるような
漠然とした世の中への疑問・恐怖
のようなものを感じるシーンだった。
また本作品では…
「無欲」である「山田」と「吉川こずえ」は
身を滅ぼさない優位な立場ではあったが
果たしてあの先に「幸せ」はあるのだろうか。
物語終盤に新しい死体を見つけた時の二人の
あの何とも言えない顔が今でも忘れられない。
「欲望」「無欲」「世の中の矛盾」。
何が正解、何が不正解、よくわからないし
答えなんてものはないのだけれど
河原にある死体は唯一この作品内で
絶対的な存在だったことは確かである。
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