映画紹介「おおかみこどもの雨と雪」

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本日の映画紹介は
「おおかみこどもの雨と雪」です。

出典:amazon(画像リンク)

○原作・監督 細田守
○脚本 奥寺佐渡子 細田守
○音楽 高木正勝
○製作 スタジオ地図
○封切日 2012年7月21日 

注意

本記事はネタバレを含んでおります。

■あらすじ
 「おおかみおとこ」と恋に落ちた19歳の女子大生・花は、やがて2人の子どもを授かる。雪と雨と名づけられたその子どもたちは、人間と狼の顔をあわせもった「おおかみこども」で、その秘密を守るため家族4人は都会の片隅でつつましく暮らしていた。しかし、おおかみおとこが突然この世を去り、取り残されてしまった花は、雪と雨をつれて都会を離れ、豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住む。(映画.com引用)


「時をかける少女」「サマーウォーズ」に続く
細田守監督原作の長編アニメーションの本作。

物語は「おおかみおとこ」と恋に落ち
二人のこどもを授かった「花」という母の
「親と子」をテーマに描いた作品。

~映像・音楽~ 

監督は「細田守」
時をかける少女やサマーウォーズなど
アニメ界でその名を聞いたことの無い人は
少ないのではと思えるほど有名かと。

長編アニメーション監督で言えば
知られていない1作目のONE PIECEの
オマツリ男爵と秘密の島を除けば

世間的にはおそらく
3作目の劇場版アニメーション。
 
音楽は「高木正勝」
映像作家でもある高木さんの音楽は
見事に映像美に溶け込む姿が見事で
これは抜群に引き込まれるので聴き所。

~演出・時間~ 
 
上映時間は117分

演出は昨今のアニメーションからすると
結構珍しい感覚は強くて(良い意味で)

例えば冒頭20分は「おおかみおとこ」と花の
出会いから別れまでを娘の雪がナレーション
する演出で最後まで突き進んでしまうし

全体的な余白の使い方
無声・SE無しのシーン
BGMの乗せ方・タイミング


すごく魅力的で爽快な演出は
きっと引き込まれるし新鮮だと思う。

~見所ポイント~ 

①「おおかみ」と「にんげん」

個人的に一番の見所は原作脚本の「妙」

おおかみとにんげん」「母と子

このふたつが見事に物語に昇華されているし
ラストまでの演出は素晴らしかったと思う。

「おおかみおとこ」と花はこどもを授かり
おおかみとにんげんの「狭間」に生まれ
(娘)と(息子)は、成長につれて

次第に「おおかみ」「にんげん」という
生き方に対しての葛藤を抱えていく。

端的にまとめると

(娘)はにんげんの生き方を選び
(息子)はおおかみの生き方を選ぶ

「おおかみ」「にんげん」という
生物における「種」というテーマが
ふたりの生き方になぞらえる展開は秀逸。

そして雪と雨がそれぞれ離れていく
その「切なさ」はこの上ない設定の妙で
本当に良い原作・脚本だったと太鼓判。

②「母」と「子」

原作・脚本の「妙」において
先に挙げた「おおかみ」と「こども」の
テーマが展開されていくなかで

最終的には「母」「子」というテーマに
昇華されていく流れは素晴らしかったと思う。

雪と雨がそれぞれの葛藤を抱えながらも
花がひとりの「母」として
二人の「子」に向き合うその姿を

アニメーションとして魅力的に描く本作は
本当に心動かされるものだったと思う。

③アニメーションとして

二人のおおかみこどもを育てる花の
壮絶さ、世間の窮屈さを描きつつ

都会から離れ自然豊かな場面では
爽快で軽快な動きを見せるなど

緩急の付け方がまず作品として
綺麗だし映画的で魅力的な印象。

雪の斜面を滑るの三人。
あのシーンはアニメ珠玉のワンシーン。

BGM、無声、無音の使い分けだったり
このアニメの魅せ方は注目だと思う。

④ラストの決断

「母」と「子」というテーマにおいて
本作を見ていて思う「母の愛」のかたちは
「子への肯定」だなとしみじみ思う。

本作ラスト。

おおかみへの生き方に揺らいでいく
その生き方を諭すようにしていた花だったが
森へ消えた雨を探す途中に気を失ってしまう。
そしてその花を力強く抱えて戻す

にんげんの生き方に揺らいでいく
大雨のなか、花を待つ雪は同級生の男の子に
自分の秘密を同級生に打ち明ける。
歩み寄る勇気、成長を遂げていく

目を覚ました花は森に戻る雨に対し
「まだなにもしてあげられていない」
涙ながらに放つその言葉に驚く雨。

この後のシーンは本作品のテーマが
綺麗に描かれた珠玉のワンシーンでした。

~注意点~ 

①童話的と現実的の両端

本作品の設定の「妙」は
「おおかみ」と「にんげん」という
至極、童話的なつくりがベースですが

そこに「おおかみこども」という
「夫婦」や「子育て」、世間との折り合い
現実的な面を組み合わせたその構図が

「どっちつかず」という意見を
感じる方が多くいるかもしれない。

でもちょっと立ち止まってほしい。

その「どっちつかず」という部分こそ
花が選んだ選択「そのもの」であって

その選択は雪と雨のふたりにあてがわれ
それぞれの選択を「母」として肯定していく。

ひとつの映画作品として
見事に完成していると思う。

タイトルが「雪と雨」ではなく
「雨と雪」という順番の意味も

きっと母としての「子への肯定」という
そのシーンが「雨」に描かれていくことの
主題に沿った順番だったと感じる。

②おおかみおとこの存在

唯一。

ただひとつ注意、本作の欠点は
「おおかみおとこ」の存在への焦点。

作中はその「名前」すら描かれず
花との別れも奇妙でコンパクトな別れ。

この「おおかみおとこ」と花の場面を
すべてナレーションで描いている時点で
存在を薄くしているのは「確信犯」ですが

それでも「母」と「子」というテーマに
見事にピントを当ててぶれない演出なので

「父親の存在意義」というものが薄く
ちょっと家族で見に行くとお父さんは
なんとも言えない感覚が出そうで注意笑。

花がシングルマザーとしてくじけずに
超人的な母としての「強さ」を持っているのも
一層にその「父」の存在意義に疑問が生じる。

ただこれは映画主題の「取捨選択」。
その点について本作は成功している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おおかみこどもの雨と雪」を一言で言うならば

子を思う母のひとつのかたち  

「おおかみおとこ」と花。
生まれたこどもを見て二人は語りかける。

「どんな大人になるんだろう。
看護師でも、教師でも、パン屋でも。

好きな職につかせたいな。
辛い思いをしないで元気に育ってほしい
大きくなるまで見守ってやろう」


子を想う母の「愛」のかたちは
どんなかたちでも「肯定」が最後にあり
それは「狼でも」「人間でも」。

そのテーマに「おおかみ」と「にんげん」
という童話的な要素を組み込みながらも

現実的な「母」と「子」の愛のかたちを
ラストのカタルシスとして開放する本作品は

「母」「子」のテーマとしては
ひとつの映画作品として珠玉の傑作。

 
5つ星評価 4.5

(*’▽’)「映画紹介一覧はこちら」(*’▽’)



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