映画紹介「うみべの女の子」

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本日の映画紹介は 「うみべの女の子」です。

出典:映画公式サイト(画像リンク)

○原作 浅野いにお
○監督・編集 ウエダアツシ
○脚本 ウエダアツシ 平谷悦郎
○音楽 world’s end girlfriend
○製作 スタイルジャム
○封切日 2021年8月20日 

注意 R15+

本作は15歳未満の方の入場・鑑賞が禁止です。

■あらすじ
 海辺の小さな街で暮らす中学生の小梅。彼女は憧れの三崎先輩に振られたショックから、かつて自分のことを好きだと言ってくれた内向的な同級生・磯辺と関係を持ってしまう。初めは興味本位だったが、何度も身体を重ねるうち、磯辺を恋愛対象とは見ていなかった小梅は徐々に磯辺への思いを募らせていく。その一方、小梅が好きだったはずの磯辺は小梅との関係を断ち切ろうとする。2人の気持ちがすれ違う中、磯辺は過去にイジメを苦に自殺した兄への贖罪から、ある行動に出る。(映画.com引用)


浅野いにお原作同名コミックの実写化。
原作ファンとしては非常に楽しみに
その反面ちょっと怖くもあった作品です。

物語は夏になっても賑わう事のない
とある田舎のうみべ近辺に住む

思春期の少年少女の時に綺麗で
大体が陰鬱なちょっとしたおはなし。

~映像・音楽~ 

監督は「ウエダアツシ」
「富美子の足」「リュウグウノツカイ」
などの作品を手掛けていて
原作コミックファンでもあるとのこと。
 
音楽は「world’s end girlfriend」

~演出・時間~ 
 
上映時間は107分

原作コミックス全2巻。
内容は田舎町のうみべに住む
思春期中学生の少年少女の物語。

時間にして100分ちょっとは
適した時間だと思うし、視聴感としては
もっと長く、長くと言うよりは
「息が詰まる」ような時間の長さ。

浅野いにおワールド全開の
きれいごと無しのその「陰鬱」部分を
実写で丁寧に演出しています。

~見所ポイント~ 

※原作大ファンのため語り多めで
長文になってしまいます。すみません。


①綺麗ごと無しの思春期少年少女

浅野いにお世界観の「陰鬱」な部分を
田舎のうみべに住む中学生の少年少女達が
綺麗ごと無し、まった無しで放り投げて
展開されていくような作品です。

中学生ながらに「性」に対しての
不器用で不純で不足感に漂うセックス。

思春期ならではの「他人」に対しての
憎悪、自意識過剰、陰鬱な部分。

思春期モラトリアムの「歪」な部分を
ひたすらに魅せる107分。強烈です。

②主演の石川瑠華&青木柚

浅野いにお世界観を演じる
キャスティングの二人は見事な妙演で
この「どこにでもいそう感」は見事。

内向的な性格で陰鬱な磯辺役の「青木柚」
風貌だとかうつろな目・視線など
違和感無く本作でも一番完成度が高い。

純粋と不純を繰り返す小梅役の「石川瑠華」
本作は綺麗ごとの無い「性」や「陰鬱」が
飛び交う世界観のなかでヌードもあります。
この時点で女優が限られていくと思うんですが
小梅のあの「不幸感」は見事で驚いた。

思春期の「中学生」という事もあって
実年齢は24歳らしいのでさすがにですが笑
それでも小梅の幼さと不純な精神状態を
見事に演じていたし引き込まれました。

③思春期モラトリアム

浅野いにお先生の「モラトリアム」は
「暗がりのなかでの薄光とユーモア」
といった独特で魅力的な部分と思うなか

原作は実は趣向が真逆な印象で
「明るみのなかのはっきりとした闇」
と言うべきか、かなり直接的で素直な闇を
モラトリアムとして描いた作品だと思う。

その中で「あの頃」の「モラトリアム」は
どうして複雑で、美しく、純粋な感情なのか
原作レビューでも書いた3つの視点が強い。
その3つの視点を実写映像感想と交えて。

①「時間がありすぎて」

何かに夢中になることや好きな感情が
足りない二人は「時間」を持て余してしまう。
その「時間」は「性」に向けられてしまう。
「不足感」を生む理由にも繋がっていく。

本作では小梅役の「石川瑠華」のヌード有。
原作セリフ「すみませんね幼児体型」で・・
とは思えない綺麗な体と生々しい姿は必見。

②「世界が狭すぎて」

舞台は田舎のうみべ近辺の中学校。
モラトリアムの特権「他人への意識」が
ぶつかり合うこの思春期という瞬間で

悩みを解決する「術」が少なすぎる
世界観の狭さもまた本作の田舎のうみべが
良い味を出す舞台で実写にも最適で。

もともと浅野いにお世界観のリアルな背景は
実写を参考にCG処理で描いている面もあり
本作の実写は再現度も高く圧巻でした。

③「悩みの答えがなくて」

そもそも解決できるような悩みでなく
悩み疲れて眠ってしまうような
起きたら忘れるような「身勝手さ」とか
こんな部分は原作展開でも良く出ていて。

二人の「自分勝手」な展開と結果。
二人が向き合い横になって眠る名シーン。
ここには時間を割いてくれて良かった。

④はっぴぃえんどの「風をあつめて」

原作でも作品内で登場する曲の
はっぴぃえんどの「風をあつめて」

物語終盤の重要シーンで歌詞と共に流れ
土砂降りのなか磯辺を探す小梅のシーン。

拾ったSDカードの「うみべの女の子」と
偶然に出会う雨上がりの磯辺のシーン。

対比するその原作場面と不協和音のように
小梅のシーンには合わない「風をあつめて」
ここは実写化一番の「見せ所」は言わずもがな
本作でもかなり原作に忠実に表現していました。

ただ驚いたのはそのBGMの「切る」部分。

原作では小梅のシーンと磯辺の雨上がりも
歌詞と並行して描かれていたのに対して
本作実写では磯辺の雨上がりシーンで切った

これは小梅のシーンに合わない
あの「違和感」や「矛盾」の対比効果を
最大限に生かす意図があったのだろうか。
それとも特に意図は無かったのか。

~注意点~ 

①「性」と「暴力」の世界

R15+の映画とは言え
作者「浅野いにお」の「陰鬱」な部分は
原作は若干の「ユーモア」で濁すことと
「漫画表現」で成立していると思う中で

実写化では逃げ場のない「陰鬱」が
彩度の低い映像でひたすらに描かれるので
描かれる「性」「暴力」も強烈で。

繰り返されるセックスも暴力も
ただただ「不快」が続くような節もあるので
思春期作品として「テーマ」があるかと言うと
「無い」ことこそ原作テーマな気もして
映画としてどうなのか。終盤は賛否両論でしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うみべの女の子」を一言で言うならば

思春期モラトリアムの膿  

思春期、モラトリアムのあの頃の
不幸、不足、不純など「膿」のようなものが
狭い世界観で幼い二人が垂れ流す本作。

原作の再現度や忠実度が高いので
浅野いにお実写化作品の完成度で言えば
前作「ソラニン」より高いと思う。

個人的に小梅役の「石川瑠華」さん。
この妙演には拍手。記憶に残りました。

映画作品としておススメできるかと言うと
ちょっと素直に首を縦には振れないけれど
浅野いにおファンとしてはおススメできる。
 

5つ星評価 3.8

(*’▽’)「映画紹介一覧はこちら」(*’▽’)




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