本日のマンガ紹介は
「ちーちゃんはちょっと足りない」です。
○作者 阿部共実
○出版社 秋田書店
○掲載誌 少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!
○発表期間 2013-2014
○巻数 全1巻
■あらすじ
「はぁ私たちはなんだか私たちって」いつも何かが欲しくって。中2女子・ちーちゃんとナツの日々日常。「空が灰色だから」の阿部共実 初の長編新作。(amazon引用)
~ジャンル分類~
日常モラトリアム漫画
~要素方程式~
[中2]×[萌え]×[不安]
=[モラトリアム]+[後味の悪さ]
このマンガがすごい!2015年オンナ編で
第一位を獲得した本作品。
ジャンルは日常モラトリアムとしましたが
ちょっとベクトルは怪しいです。
話の大筋は普通の中学2年生女子の
なんの変哲もない日常。
ただそれだけで
一位に選出されるわけはなく
この作品に見え隠れする
「悩み」「展開」には唸るものがあります。
~見所ポイント~
①足りない
本作品に登場する人物は
○精神性が足りない「ちーちゃん」
○自己肯定感が足りない「ナツ」
この二人がメインで描かれる
中2女子のなんてことのない日常です。
ちーちゃんはまるで小学生のような
精神性を持ち合わせていて
中学生とは思えない言動や行動で
周囲をわかして困らせます。
一方、ナツは中学2年生女子の
年齢相応な「悩み」「葛藤」を抱えて
やっぱりなんだか自分への自信が
「足りない」普通の女の子です。
こんな対比とコミカルな日常劇で
前半は進むのですが・・・
物語は後半に入り「ある事件」が起きてから
雰囲気が一気に変わります。(②へ続く)
②引き込まれる後半
あるときクラスで
お金が盗まれる事件が起きるのですが
疑われたちーちゃんをかばうように守った
友達の旭の信頼をケロっと裏切るように
なんの罪悪感も無いかのように
盗んだことをちーちゃんは明かします。
そして欲しかったリボンを
買いたい気持ちからか
ちーちゃんが持っていたお金をもらい
ナツもその罪に手を伸ばしてしまいます。
そのことをきっかけに
ナツは 「罪悪感」に追われて
買ったリボンは結局捨ててしまうし
友達の旭とは縁を切るかのように離れてしまう。
物語最後にはちーちゃんが
行方不明になってしまうのですが
姉と一緒に探し
あっけなく再会を果たして
あっけなく終わります。
③本作品最大の注目は「不安」
実は名前は存じていましたが
作者の阿部さんの作品は初挑戦でした。
この作者さんの本質は「不安」だと思います。
不安の描き方が絶妙。
モラトリアム漫画と言えば
「成長」「悩み」「葛藤」「希望」「絶望」
色々な部分での不完全、不足。
代表的には「思春期」が良く登場します。
本作品で言えば「不足感」と「不安感」が軸で
「不足感」はまさにタイトル通りの
「足りない」があるように
ちーちゃんは何もかも足りないと
泣き出してしまうし
ナツも順当に成長していく友達たちを
遠目に眺めて自身の不足感に悩みます。
「不安感」は後半・・
異様に増える黒いベタ塗りの対比をはじめ
盗んでしまったお金で買った
ナツの「リボン」がまさに象徴的で
その「不安」に耐えきれずに
ナツはリボンを結局捨ててしまいます。
そういう「不安」が後半に
一気に押し寄せてくる展開には
前半、ただの萌え日常漫画じゃないかと
舐めていた読者を一発で作品内に
引き込んでしまうんだと思います。
~注意点~
①後味の悪さ
先に挙げたように
「不足感」「不安感」を感じさせながらも
そのままあっけなく終わってしまうこの物語には
「結論の無さ」だったり
何か潜むような「不安感」だったり
かなりのモヤモヤを抱える感情があり
一級品の「後味の悪さ」があります。
それでもそういう「後味の悪さ」が
読者の「不安」を生んでもう一回また一回と
再読したくなるような魅力にもなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちーちゃんはちょっと足りない」
を一言で言うならば
「ちーちゃんはけっこう足りない」
冒頭で挙げた第一話の画像で
「ちーちゃん」「ナツ」「旭」が
楽しそうに歩く姿と対比するように
最終話では友達の「旭」が消えた
「ちーちゃん」「ナツ」の姿が描かれます。
何かが足りなかった二人は
それでも「笑顔」で歩いていて
その歩く位置は「戻せない時間」を示すように
少しだけ「前」に進みます。
人間誰しも
「ちょっと足りない」
のは当たり前で
その「ちょっと」が
人間の「良さ」でもあり
「悪さ」でもあると思います。
ひとつ気になるのは客観的に何度読んでも
「ちーちゃん」は「けっこう足りない」笑。
けっこう足りない「ちーちゃん」と
ちょっと足りない「ナツ」。
ちーちゃんを見て「私も同じだ」と共感する人。
ちーちゃんを見て「アホだ」と揶揄しても
ちーちゃんよりマシなナツを否定できない人。
ちーちゃんもナツも「残念」と共感できない人。
こういう対比を持たせることでの
「不安」の振れ幅の広さと
タイトルにさえも「ちょっと」だろうか?と
「不安」を感じてしまうような
それこそどの部分にも
「不安」を潜ませるような手腕に
本作品の神髄を感じます。
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