本日のマンガ紹介は
「ちーちゃんはちょっと足りない」です。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/ちーちゃんはちょっと足りない.jpg)
○作者 阿部共実
○出版社 秋田書店
○掲載誌 少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!
○発表期間 2013-2014
○巻数 全1巻
■あらすじ
「はぁ私たちはなんだか私たちって」いつも何かが欲しくって。中2女子・ちーちゃんとナツの日々日常。「空が灰色だから」の阿部共実 初の長編新作。(amazon引用)
~ジャンル分類~
日常モラトリアム漫画
~要素方程式~
[中2]×[萌え]×[不安]
=[モラトリアム]+[後味の悪さ]
このマンガがすごい!2015年オンナ編で
第一位を獲得した本作品。
ジャンルは日常モラトリアムとしましたが
ちょっとベクトルは怪しいです。
話の大筋は普通の中学2年生女子の
なんの変哲もない日常。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/1第一話.jpg)
ただそれだけで
一位に選出されるわけはなく
この作品に見え隠れする
「悩み」「展開」には唸るものがあります。
~見所ポイント~
①足りない
本作品に登場する人物は
○精神性が足りない「ちーちゃん」
○自己肯定感が足りない「ナツ」
この二人がメインで描かれる
中2女子のなんてことのない日常です。
ちーちゃんはまるで小学生のような
精神性を持ち合わせていて
中学生とは思えない言動や行動で
周囲をわかして困らせます。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/2ちーちゃん.jpg)
一方、ナツは中学2年生女子の
年齢相応な「悩み」「葛藤」を抱えて
やっぱりなんだか自分への自信が
「足りない」普通の女の子です。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/3ナツ.jpg)
こんな対比とコミカルな日常劇で
前半は進むのですが・・・
物語は後半に入り「ある事件」が起きてから
雰囲気が一気に変わります。(②へ続く)
②引き込まれる後半
あるときクラスで
お金が盗まれる事件が起きるのですが
疑われたちーちゃんをかばうように守った
友達の旭の信頼をケロっと裏切るように
なんの罪悪感も無いかのように
盗んだことをちーちゃんは明かします。
そして欲しかったリボンを
買いたい気持ちからか
ちーちゃんが持っていたお金をもらい
ナツもその罪に手を伸ばしてしまいます。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/4お金.jpg)
そのことをきっかけに
ナツは 「罪悪感」に追われて
買ったリボンは結局捨ててしまうし
友達の旭とは縁を切るかのように離れてしまう。
物語最後にはちーちゃんが
行方不明になってしまうのですが
姉と一緒に探し
あっけなく再会を果たして
あっけなく終わります。
③本作品最大の注目は「不安」
実は名前は存じていましたが
作者の阿部さんの作品は初挑戦でした。
この作者さんの本質は「不安」だと思います。
不安の描き方が絶妙。
モラトリアム漫画と言えば
「成長」「悩み」「葛藤」「希望」「絶望」
色々な部分での不完全、不足。
代表的には「思春期」が良く登場します。
本作品で言えば「不足感」と「不安感」が軸で
「不足感」はまさにタイトル通りの
「足りない」があるように
ちーちゃんは何もかも足りないと
泣き出してしまうし
ナツも順当に成長していく友達たちを
遠目に眺めて自身の不足感に悩みます。
「不安感」は後半・・
異様に増える黒いベタ塗りの対比をはじめ
盗んでしまったお金で買った
ナツの「リボン」がまさに象徴的で
その「不安」に耐えきれずに
ナツはリボンを結局捨ててしまいます。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/5リボン.jpg)
そういう「不安」が後半に
一気に押し寄せてくる展開には
前半、ただの萌え日常漫画じゃないかと
舐めていた読者を一発で作品内に
引き込んでしまうんだと思います。
~注意点~
①後味の悪さ
先に挙げたように
「不足感」「不安感」を感じさせながらも
そのままあっけなく終わってしまうこの物語には
「結論の無さ」だったり
何か潜むような「不安感」だったり
かなりのモヤモヤを抱える感情があり
一級品の「後味の悪さ」があります。
それでもそういう「後味の悪さ」が
読者の「不安」を生んでもう一回また一回と
再読したくなるような魅力にもなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちーちゃんはちょっと足りない」
を一言で言うならば
「ちーちゃんはけっこう足りない」
冒頭で挙げた第一話の画像で
「ちーちゃん」「ナツ」「旭」が
楽しそうに歩く姿と対比するように
最終話では友達の「旭」が消えた
「ちーちゃん」「ナツ」の姿が描かれます。
何かが足りなかった二人は
それでも「笑顔」で歩いていて
その歩く位置は「戻せない時間」を示すように
少しだけ「前」に進みます。
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/1第一話(比較用).jpg)
![](https://manga-beta-beta.com/wp-content/uploads/2020/02/6最終話.jpg)
人間誰しも
「ちょっと足りない」
のは当たり前で
その「ちょっと」が
人間の「良さ」でもあり
「悪さ」でもあると思います。
ひとつ気になるのは客観的に何度読んでも
「ちーちゃん」は「けっこう足りない」笑。
けっこう足りない「ちーちゃん」と
ちょっと足りない「ナツ」。
ちーちゃんを見て「私も同じだ」と共感する人。
ちーちゃんを見て「アホだ」と揶揄しても
ちーちゃんよりマシなナツを否定できない人。
ちーちゃんもナツも「残念」と共感できない人。
こういう対比を持たせることでの
「不安」の振れ幅の広さと
タイトルにさえも「ちょっと」だろうか?と
「不安」を感じてしまうような
それこそどの部分にも
「不安」を潜ませるような手腕に
本作品の神髄を感じます。
個人的好み度 83%
コミックの品揃えが世界最大級の電子書店!
約9000作品の無料読み放題コーナーも充実!
電子書籍で購入なら《ebookjapan》がおススメ
コメント