本日のマンガ紹介は
「七夕の国」です。
○作者 岩明均
○出版社 小学館
○掲載誌 ビックコミックスピリッツ
○発表期間 1996-1999
○巻数 全4巻
■あらすじ
昔、「丸神の里」を侵略しようとする島寺軍と、里を守ろうとする丸神の里人の戦があった。兵力では圧倒的に勝るはずだった島寺軍は、丸神の里の不可解な超能力によって敗北した。
時は移り現在、新技能開拓研究会に所属する大学生、南丸洋二は、念じると小さな穴を空けることができる超能力を持っていた。しかし、それが「何のために」使えるのかというと、これまた何もないということが現状であった。
ある日南丸は、丸神ゼミ室に呼び出されるのだが、これをきっかけに丸神の里の歴史、自身の超能力など、多くの問題に直面していくことになる。
~ジャンル分類~
日常SF漫画
~要素方程式~
[超能力]×[日常]×[SF]
=[七夕]×[世界問題]
代表作「寄生獣」で有名な岩明均さんの作品。
内容としては
小さな穴を空けられる超能力を持つ大学生の南丸が
大学の丸神ゼミ室に呼ばれたことをきっかけに
自身の超能力、丸神の里の秘密、はたまた、
世界的な問題に直面していくという日常SF物語。
すごく独特なストーリーで・・
説明しづらい作品なんですが(汗)
作風としては「寄生獣」と同ジャンルで
日常の中のSF物語から人間の本質や人生感
哲学を散りばめさせていく感じです。
~見所ポイント~
①ミステリー大作
まずはなんと言っても、計算されつくした物語。
これに関しては圧倒的に「寄生獣」よりも完璧で
見事なミステリーに仕上がっているので見所。
(まあ最後の謎解きがいいか悪いかは別として)
ストーリーがストーリーなので
これまた非常に説明しづらいのですが
丸神の里人たちが掲げていた旗に
描かれているマークが肝であり・・・
上から「カササギ」「丸」「人の手」という
この構図が最後の最後にひとつの答えに繋がる
と言った物語になっています。
丸神の里では7日間の祭りが代々行われている。
七夕の話にゆかりのあるカササギという鳥。
人間の手と、中心にある謎の丸。
これらがどう繋がっていくのか。
と、まあミステリーなので紹介はしきれませんが
話が繋がっていく様は、読んでいて爽快。
引き込まれると思います。
②地味~な人物描写
岩明均さんの作品を読んでいると驚くというか
人物描写が「丁寧」と言うか、すごく異質な感じ。
人物描写があまりにも普通というか
総じて・・褒め言葉の「地味」なんです。
これはまあ見てもらえば・・・。
このことは超能力に
あまり驚かない人たちにも感じられるかなぁ。
これに関しては
むしろ抑揚が無さすぎて不自然な感じ。
③ここぞの哲学感
良ミステリーだけではないのが岩明均さんの魅力。
もうひとつの見所は、この「謎解き」と同時に
主人公の南丸が 「自身の超能力の使い道」
というキーワードにおいて
自分なりの哲学感や人生観を語っていく様にある。
少し内容を語ってしまうと
丸神の里の人たちが持つ超能力には
「窓をひらいた者」と「手のとどく者」の
二つが存在すると言われ・・
窓をひらいた者は「恐ろしい夢を見るちから」
手のとどく者は「穴を空けることができるちから」
と言った構図になる。
そして、超能力で消えてしまったものは
「窓の外」に行くと語られる。
この「窓の外」というものは
言ってしまえば「死」であって
それ以外にも 「概念」だとか「宇宙」だとか
すごく幅広い表現になるのだけれども
この「窓の外」を
見ることができる者が「窓をひらいた者」
この「窓の外」に
物を送ることができるのが「手のとどく者」と
まあこんな感じで、作者の哲学感が
わかりやすく語られていくんです。
読み返してみると意味わからん説明ですが笑
岩明均さんの哲学感は本当に見どころなので。
~注意点~
①地味、地味、地味
まあこれは本当しょうがないというか・・・。
漫画に娯楽性を求めている自分にとっては笑。
人物描写とか、作者の真面目さは本当に尊敬できて
哲学感に関してはベタ惚れなんだけれども
「楽しさ」とか「抑陽」が皆無なので
その点に関しては注意というか、要するに・・
はい・・・「地味」なんです!!!
②すごく練ってあるんだが・・
代表作「寄生獣」とは比べ物にならないほど
完璧というか、無駄なくまとまっているけれども
ところどころの主人公の哲学感とか
ここぞの名言に関しては 明らかに「寄生獣」に武があると感じました。
ミステリー最後の結論もなんだか拍子ぬけというか
そもそも過去の「丸神の里」を描いた意味が
あの「旗」を出すためだけに感じ・・もう少し・・
過去と現在を結ぶ物語になっても良かったんじゃないかと感じます。
なので「寄生獣」を既読の人が
この作品を読んだのならおそらく8割ぐらい
「寄生獣」を支持するんじゃないかと思います。
話のまとめ方や人物描写などは
七夕の国が圧倒的なんですが
名言やテーマに関しては「寄生獣」というか・・。
とりあえずストーリーと人物描写に関しては
断然こちらの「七夕の国」をお勧めします。
自分はと言うと、岩明均さんの「哲学感」に
一番期待をしているので 「寄生獣」が大好きです。
そこはまあ、見比べてご判断を♪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「七夕の国」を一言で言うならば
「窓の外って何の外?」
穴を少し空けられる超能力を持つ南丸が
最終的には世界的な壮大な話に巻き込まれていき
「自身の超能力意義」をヒントに哲学を見出す。
また同じ超能力を持つ頼之、正美もまた
「自身の答え」を見つけようと
それに向かっていく様は、4巻ながらも
見ごたえ十分だったと思う。
「穴を空ける超能力」とは何だったのか。
窓の外とは何だったのか。
何もしなければ解決なのだろうか。
その答えは、この物語では語られないし
その正体自体もおそらく読んだ人には
拍子抜けだろうけど、そんなことよりも・・
この「超能力」が物語に入り込んで
どうゆうことが考えられていったのか
どんな視点が見えたのか
そういう読者一人一人に委ねられている
そんな部分が大事な作品です。
そして最後に一言。
「ディメイション・ボール」って・・。
フリーザを思い出してしまい以降ツボに・・笑。
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