本日のマンガ紹介は
「夕凪の街 桜の国」です。
○作者 こうの史代
○出版社 双葉社
○掲載誌 WEEKLY漫画アクション
漫画アクション
○発売日 2004年10月
○巻数 全1巻
■あらすじ
広島原爆から生き延びた被爆女性と、被爆2世と言われる女性の物語。
~ジャンル分類~
原爆投下後の日常漫画
~要素方程式~
[原爆投下]×[広島]×[女性]
=[生]×[死]×[意味]
広島原爆投下における被爆した女性
平野皆実の数年後を描いた「夕凪の街」と
被爆二世と言われる女性石川七波の
子供・大人時代を描いた「桜の国」の物語。
説明すると二本立てのような感じがしますが
「夕凪の街」の平野皆実の弟の旭は
「桜の国」でも登場し、その旭の子供が
「桜の国」の主人公である七波なので
舞台は少し違うものの
ストーリーはつながっていると考えてよいです。
多少読んでいて、家系図が欲しくなりますが笑
注意して読んでいればわかるので大丈夫です。
夕凪の街、桜の国(子供時代)
桜の国(大人時代)の計3部作ですが
総ページ数は100程度なので
非常に読みやすく、そして濃い内容です。
~見所ポイント~
①人に焦点を当てた
まず本作品一番の見所は
「人に焦点を当てた作風」かもしれない。
こういった作品の多くは
原爆シーンや恐ろしさの描写が多く
戦争教育に関して自分としては
「過去の惨劇や恐怖」を
現代の自分が知る意味がわからず
モヤモヤを持ってるし必要性を見いだせない。
しかしこの作品の神髄は
「原爆の恐ろしさや被害」を伝えるより
「原爆が人間に与えた心の傷」という
「人への焦点」が中心に描かれている。
これは新鮮というか、これこそ・・
「原爆投下を後世に伝える意味」のような
戦争教育の真理と思ったわけです。
そうだ「原爆の恐ろしさ」じゃなく
「原爆が人間に与えたこと」が重要だ。
そういう意味では
ほとんどが日常の中の人間ドラマなので
押しつけがましくないというか
「戦争の向き合い方」「伝え方」に感心する。
作品中は原爆被害のシーンは少なく
原爆投下後の「人の想い」のような描写が多い。
幸せになることを恐れる皆実の想い
被爆二世としての意味を考える七波の想い
弟の手紙、凪生の想いと
それに立ち向かう東子の想い
本当に切実でそれでいて
温かくも感じる想いが見所。
作者自身の想いもあとがきに書かれていて
戦争テーマに真摯に立ち向かおうとする想いに
心が打たれたし、好感が持てた。
②淡く古い画風
画風もまた個性的というか古臭いというか。
まさにこの作品のテーマにあっているような
どこか淡く、そして落ち着く画風です。
特に上に乗せた見開きページは
かなり心を揺さぶられた。
原爆の集落で暮らしていた過去と
現在は野原になった場面の対比。
風が吹かない過去の夕凪の街と
風の吹く現代の野原。
この対比は見事。
ここは本当にすごい見開きで深い。。
③強烈な言葉群
総ページ100程度の物語の中に
すごく端的にまとめられたストーリー。
平野皆実の人生、七波の想いと
弟の凪生と同級生の東子の恋
どれも端的で心揺さぶられる場面が
ここぞと登場するのは作者の手腕が光る。
何より作品中の”想い”を表す
辛辣な言葉群は強烈で切実です。
特に作品内の言葉群でも強烈だったのは
夕凪の街の平野皆実のこの言葉だ。
「嬉しい?
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
『やった! またひとり殺せた』
とちゃんと思うてくれとる?」
生きる意味を探していた平野皆実が
「死ぬ意味」もわからないという事実。
この台詞は自分には重すぎました・・・。
~注意点~
①楽しい漫画じゃない
「原爆が人に与えた傷」のようなものを
真摯に「漫画」という媒体を使って伝えている
”のみ”なので
漫画としての
「エンターテイメント」や「娯楽」はなく
そういう意味では、非常に重く、辛い読後感は覚悟して下さい!
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「夕凪の街 桜の国」を一言で言うならば
「原爆投下が人に与えたこと」
原爆の恐ろしさではなく
原爆が人に与えたことを描くこの作品。
自分のモヤモヤさえも解決させてくれた
とてもいい作品だった。
まだまだこのテーマに関して
知識も感心も薄い自分ですが
やはり「人が死んだ」という事実に対して
どうゆう心構えを持っていくか。。。
少なくとも最低限の知識と
自分の意志を持っていかなければいけない。
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