本日のマンガ紹介は
「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」です。
○作者 押見修造
○出版社 太田出版
○掲載誌 Web連載空間「ぽこぽこ」
○発表期間 2011~2012年
○巻数 全1巻
■あらすじ
”自分の名前が言えない”大島志乃。
そんな彼女にも、高校に入って初めての友達が出来た。ぎこちなさ100%コミュニケーションが始まる。いつも後から遅れて浮かぶ、ぴったりな言葉。 さて、青春は不器用なヤツにも光り輝く……のか?(amazonより引用)
~ジャンル分類~
コンプレックス交錯青春漫画
~要素方程式~
[吃音]×[コンプレックス]
=[青春劇]+[相互理解]
高校に入って
クラスで初めての自己紹介の場で
自分の名前が言えない女の子
大島志乃が送る青春日常劇。
自分の名前が話せないという
独特な題材で展開されていく本作品は
同級生とのコミュニケーションや葛藤など
じわじわと物語性を高めてを描かれていく・・。
~見所ポイント~
①自分の名前が言えない
本作品のタイトルにもなっている通り
大島志乃という女の子は 緊張したり
ある発音で言葉が出てこない特徴を持っている。
作品内では正確に描写はされていませんが
いわゆる「吃音症」である。
大島志乃は上手く話せなかったり
自分の気持ちを伝えられずに
学校生活でも苦労をしていく中で
一生懸命コミュニケーションを取ろうとする。
まずはそんな志乃ちゃんの頑張る姿が
いかにもでベタな青春劇で心動かされます。
②コミュニュケ―ション
この作品は吃音症の大島志乃が
友達の加代ちゃんや菊池との
狭い範囲ではありますが
ぎこちないコミュニケーションに奮闘する。
題材は「吃音症」ではありますが
それは物語の「基点」であって
実際読んでみると
その基点から広がるコミュニケーションの
難しさとか葛藤だとか
そういう部分が真摯に描かれています。
これは誰しもが共感できる内容だと思う。
③コンプレックスとは・・
「吃音症」で悩む大島志乃が
必死に友達との「コミュニケーション」を取ろうとして
相手を理解しようだとか
自分を理解して欲しいなどの
強い想いを感じる作品です。
大島志乃は物語終盤
友達に誘われた加代ちゃんと組んだバンド発表に
自分の気持ちが空回りした事で
最終的には参加することを止めてしまった。
そして加代ちゃんが一人で発表を終えた直後に
今までにないくらいの大きさ、鮮明さで
声を上げて自分の気持ちを高らかに叫ぶ。
本作品の一番の見所は
実は「吃音症」でも「コミュニケーション」でもなく
「人が抱えるコンプレックス」という
「内面傾向に落ちる人間思考」の表現だと思う。
作品序盤、友達の加代ちゃんが
自分に話しかけるも上手く話せない志乃に対して
「喋れないんなら紙に書けばいいじゃん」と
はっきり言うシーンがあるのですが
実はこれが「コンプレックス」という題材の
ひとつの答えなんだと思っています。
自分の人生観の中で思うのは
「コンプレックス」は自分の内面で悩んでいても
解決はしないし、かといって・・・
すぐにそれを自分の力で治す事も難しいと思う。
ただ、それを「別の部分」で補ったり
そもそもそのコンプレックスというものを
「他の人が認めてくれる」のなら
それはもうコンプレックスではないのではないかと。
それを実行する為に必要なものは
実は「勇気」ひとつだけであって
その「勇気」を実行した大島志乃の
叫ぶ本作品終盤場面は素晴らしいの一言。
~注意点~
①押見修造ファンの皆様へ
強いて言うなら
押見ファンが期待しているであろう
「ドブゲロ」で「クソムシ」などの
洗練された汚表現は皆無だという事ぐらい笑。
これはでも、確実に注意点です。
自分も最初は「また変な題材で変態漫画」を
という先入観で読みましたが笑
内容は非常に真摯で賢明な作品で
良質な青春物語だったと思っています。
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「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」
を一言で言うならば
「人が抱えるコンプレックスとは」
「吃音症」という題材を通して
人間が抱えるコンプレックスや内面傾向を
数人の友達とのコミュニケーションや
青春劇を織り交ぜて展開する本作品。
相手を理解したい
自分を理解して欲しいという気持ちに
必ずしも立ちはだかるコンプレックスは
実は誰しもが持ち合わせているもの。
そのコンプレックスという題材を
押見先生自身の実経験である「吃音症」で
非常に真摯に描いている本作品は
なかなか読みごたえのある内容です。
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