映画紹介「ジョゼと虎と魚たち(実写)韓国版」

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本日の映画紹介は
「ジョゼと虎と魚たち(実写)韓国版」です。

出典:映画公式サイト(画像リンク)

○原作 田辺聖子
○監督・脚本 キム・ジョングァン
○音楽監督 ナレ
○制作 グジョンア
○封切日 2021年10月29日 

注意

本紹介記事はネタバレを含んでおります。

注意2

本紹介記事は原作、日本実写化作品など
視聴内容比較も含めるためご注意ください。

■あらすじ
 卒業を控えた大学生のヨンソクは、ある日、道端に倒れている車椅子の女性に遭遇する。彼女家まで送り届けたヨンソクは、お礼に夕飯を振る舞われる。足が不自由な彼女は祖母と二人で暮らしていた。ジョゼと名乗る彼女は本で知識を得ることが好きで、独特な感性をもつ。そんな自分だけの世界観をもつ魅力的なジョゼに、ヨンソクは段々と興味をもっていく。
 時々ジョゼの家を訪れるようになったヨンソクは、ジョゼには親がいなく、養護施設から逃げ出し、おばあさんに拾われてから自分の世界に閉じこもっている事を知る。その事実を知り、ジョゼへの想いを強くしたヨンソクは、大学の女友達のツテを頼って、市の補助金でジョゼの家の改装にこぎつける。だが、ヨンソクと女友達の親密そうな雰囲気を察したジョゼは彼を拒絶するのだった──。(映画公式サイト引用)


原作:田辺聖子による同名小説を
韓国で実写映画化した本作品。

韓国人気俳優ダブル主演として
ジョゼ役にハン・ジミン
ヨンソク役にナム・ジュヒョク。

日本では2003年に実写映画化
2020年にはアニメ映画化。

個人的に大ファンの原作小説のため
韓国版実写映画も気合いを入れて紹介。
(長文になります。すみません)

~映像・音楽~ 

監督は「キム・ジョングァン」
韓国映画、ドラマ事情は全く知らず
あまり紹介ができません。。

ただ映像、音楽含めてすごく繊細で
余韻を含めた綺麗な描写は見所でした。  

~演出・時間~ 
 
上映時間は117分

まずはじめに。
原作は足の不自由なジョゼと名乗る女性と
大学生の青年が出会うことから始まる恋物語。

そして自分が思う原作小説の注目点は
恋愛の「終始」「幸と不幸」などの対比。
この対比、ジョゼの心情を「虎」「魚」という
象徴的に描くその味わいが軸だと思っている。

始まりがあれば終わりもある。
幸せを感じることで見える不幸もある。

その重要な軸を中心に本作実写韓国版は
基本的には日本での実写映画をベースに
丁寧に繊細に実写化をしていた印象でした。

韓国映画はほぼ初見なんですが
すごく「重たく」「切なく」の要素が強く
抑揚が少なく静かに染み込むような印象。
それゆえ視聴感は結構長い感覚でした。 

~見所ポイント~ 

①韓国人気俳優ダブル主演

韓国での人気俳優ダブル主演として
ジョゼ役にハン・ジミン
ヨンソク役にナム・ジュヒョク

大学生の青年役ヨンソクのナム・ジュヒョクは
若手俳優としてはすごく渋めな演技の印象で
その声質もあってか日本実写と比較してみると
かなり「大人」な印象が強かったです。

そしてジョゼ役のハン・ジミン。
驚いたんですが1982年生まれということで
40歳目前とは思えない美しさに圧巻。
演技も引き込まれるようなその「表情」は注目。

どちらの役も全体的に「静か」で「暗い」。
カメラワークや映像表現も含めて「静寂」。

②ターニングポイント

先に挙げたように本作重要な「軸」でもある
その恋愛の「終始」「幸と不幸」の対比。

本作ではこのターニングポイントが
2つあったのではないかと思う。
(ジョゼの引き留め、象徴の虎と魚を除き)

<二人寄り添う布団のシーン>
ひとつは互いを想う恋仲に発展した後
凍えそうな夜に二人布団で暖まるシーン。
幸せを感じるなかヨンソクがストーブを取りに
布団から出てジョゼがひと時一人になるシーン。
そこでジョゼは涙を流すんです。

この涙は「幸せ」の涙か「不幸せ」の涙なのか。
まさに原作テーマの「軸」にもなるシーン。
個人的にはこのシーンでのジョゼの「涙」は
「幸」と「不幸」の両意識を俯瞰したような
「始」「終」を見据えたものだった気がした。

<二人で乗る観覧車のシーン>
そしてもうひとつは観覧車のシーン。
遊園地の観覧車に乗った二人は幻想的な世界で
頂上で「幸せ」を噛みしめるような場面。

頂上からは今度は「下がる」一方ということで
これは原作テーマの「終始」を象徴とした
韓国版実写映画の新しい表現だったのかと思う。
その前にジョゼがヨンソクに妊娠検査陰性結果を
渡す場面もまたこの「終始」を予感させる余長。

観覧車場面で印象的なのは降りた観覧車ドアが
係員の手違いで開かずもう一周乗ることになる。

観覧車のシーンを恋愛の「終始」の象徴として
描いていたとしたら、象徴の「終」から再度
「始」に移り「終」を際立たせる妙演出。
日本版で言えばジョゼと恒夫のサービスエリアで
カーナビを消した瞬間と同じ解釈だったと思う。

もう1周が始まった時の二人のあの表情や
この観覧車の演出を見るに、二人が「終始」を
意識するシーンとしては巧みな演出だった。

③虎と魚について

原作小説のテーマ、軸の個人的解釈として
「虎」は「始」や「幸」をあらわし
「魚」は「終始」「幸と不幸」の俯瞰的な
視点を伴ったジョゼの感情と思うなか
韓国版ではどうだったか・・。

「虎」は同じの印象でした。
「魚」は少し変えてきた印象でした。

そもそもが「虎」も「魚」もシーンとしては
ものすごく短く一瞬でありテーマ性から見ると
かなり「控えめ」な印象でした。

「魚」については水族館のシーン。
ここでジョゼは原作にも日本版実写にも
ない新しい感情を話すことになる。
ここは原作魅力の「俯瞰」という視点に沿った
素敵なセリフ・シーンだったと思う。

そして韓国版での「魚」は「終」でした。
原作、日本実写では「魚」は「終始」でしたが
韓国版は間違いなく「終」
原作、日本版にあったジョゼの「魚」の象徴は
韓国版では違った感情として表現した。

~注意点~

①抑揚が無い「静か」な映画

とにかく「静か」で「暗い」映画です。
序盤のジョゼ宅のシーンなどは目を細める程
暗い映像表現に振り切っていてることもあって
とにかく「静寂」とした作品の印象でした。

セリフをそぎ落とし、表情や余白を強めて
伝えようとする手腕は韓国特有か監督特有か
どちらかはわからないんですが

この静寂とした「抑揚」の少なさというのは
映画作品としてはかなり「退屈」な面も強く
苦手な方もいるかもしれない。
もう少し恋愛の「始」はあっても良かった。

②韓国版ジョゼについて

ハン・ジミン演じるジョゼ役は
原作、日本実写、アニメを含めたなかで
一番静かで暗く、感情の抑揚は少なかった。

感情の「抑揚」が少ないことは問題無いが
この「抑揚」はきっと原作テーマにもある
「幸と不幸」「終始」にも繋がる要素でもあり
その面で言うとテーマが「薄味」に見える
デメリットが強く出た面もあるかなとも思う。

また原作のエロティシズムについても
日本実写版は強く描いた印象に対して
韓国実写版は淡くぼかした印象が強い。
と、いうよりエロティシズムはほぼ無い。
ここは少し原作テーマとしては弱い。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ジョゼと虎と魚たち(実写)韓国版」
 を一言で言うならば

静寂と暗澹あんたんの韓国版ジョゼ

ベースはほぼ日本実写版を基準として
静かで寂しげな描写を強めたジョゼを描く。

ジョゼの感情や抑揚の少なさを除けば
原作テーマにはすごく沿った印象で良かった。

その原作テーマのターニングポイントを
2人で入る布団と2週目に入る観覧車として
描いたその脚本構成も良かったと思う。

韓国版のタイトルは「ジョゼ」
虎と魚たちはタイトルに含めなかった。
劇中でも「虎と魚」の象徴は薄目で
原作テーマの恋愛の「終始」に舵を取って
制作した作品なのだと振り返って思う。
 

5つ星評価 3.8

(*’▽’)「映画紹介一覧はこちら」(*’▽’)





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